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AIの導入方法とは?導入によるメリットと成功のためのポイントも解説!

車の自動運転やCT画像の自動認識など、広い範囲でAIの実用化が進んでいます。現在、AIの開発、導入を検討している企業担当者も多いのではないでしょうか。この記事では、AIの基礎知識や導入方法、導入メリットなどについて解説しています。自社にAIを導入する際の参考にしてください。

目次

AIが出来ること

AIによって実現できることは、大きく分けると「認知」「通知」「提案」「自動化」「予測」「事前対処」「環境認知」の7つです。

どの機能を実現するにしても、AIに適しているのは自然言語処理や音声認識など、定量化してパターン認識できる分野です。一方、人が自然に感じるコミュニケーションや臨機応変な対応などの定性的であいまいな情報が多い分野はAIが苦手としています。

AIを有効活用するためには、あくまで人間がAIを道具として使いこなすことが必要になります。AIは何でも実現できる訳ではなく、得意不得意の分野を理解して、有効活用することが重要です。

機械学習(アクティブラーニング)

機械学習(アクティブラーニング)とは、膨大なデータを機械に入力して、パターンを認識できるようにする方法です。

機械学習においては、パターンを見つけるための特徴を人間があらかじめ教えることが特徴です。例えば画像認識でキリンと馬を区別させるAIを学習させる際には、首の長さに注目するようにプログラミングしておきます。

機械学習のAIは、大量のデータを学習して自ら精度を向上させていきます。AIの判定に対して人間が答えを教えることで、AIが正解を出すための方法を「推論」し、判定方法を進化させていくからです。そのため、人間が試行錯誤しながらアルゴリズムを書き直すよりも、精度の高いシステムを効率的に構築できます。

深層学習(ディープラーニング)

深層学習(ディープラーニング)のAIは、機械学習と異なり、自らデータの特徴を見つけ出し、学習できるタイプです。機械学習を進化させた方法であるため、深層学習は機械学習の一種に分類されます。

機械学習では、学習させるためには人間が判断した正解・不正解のタグ付けを行ったサンプルデータが必要でした。しかし、深層学習ではこのような作業が不要なため、膨大な作業時間を削減できるようになりました。

また、人間が特徴を定義しないことで、より複雑な特徴抽出も可能になっています。近年のAI技術の発展には、深層学習による技術的なブレイクスルーが大きく影響しています。

AIを導入するメリット

AIを導入するメリットで期待されているのは、業務の効率化です。例えば医療分野においてはCT画像の解析にAIが活用されています。少子高齢化が進む日本においては、AIによって人の業務を代行させることは労働力不足の解消にもつながるでしょう。

また、人間の能力では不可能なデータ分析や予測を行えることもAIの大きなメリットです。例えば膨大なSNSのテキストデータを収集・分析して顧客ニーズを抽出するのにAIが活用されています。また、さまざまな要因が絡んで予測が困難な天候の分析にもAIが使われています。

AIの導入方法

AIを導入するには、まず自社のどの業務、事業にAIを適用するのか検討し、そこで何を実現するかを決めなければなりません。そのうえで、費用対効果の見積もりや小規模なテスト運用による実証を行います。

目標達成が現実的ならば、データを収集・蓄積しAIに学習させていきます。学習の段階ごとに開発側と運用側が実用的であるか評価し、チューニングする作業も必要です。

次項から、これらの各ステップについて解説します。

業務課題の定義

最初のステップは自社が抱える問題を洗い出し、どこにAIを導入するのか明確にすることです。例えば、コールセンター業務における人手不足が問題になっているなら、定型的な問い合わせの対応をAIに代行させることが解決策の1つとして考えられます。

この段階では、AI導入によって、どの程度の成果が上げられるかを数値にして予測することが重要です。上記の例では、スタッフの残業時間をどれだけ減らせるか、人員を何人削減できるかなどを予測します。

AI導入のゴール設定

なぜAIを活用するのか、何を目指してAIを導入するのかも明確にする必要があります。例えば先ほどの例において、AI搭載のチャットボットを導入することで、スタッフは柔軟な対応が必要とされる顧客に集中できると仮定します。

もしスタッフの業務負担軽減や人件費削減が最終的な目標なら、AIを導入しても問題ないでしょう。しかし、親密な対応によって顧客との良好な関係を築きたいのなら、無機質な応答になりがちなチャットボットに業務を代行させるのは不向きかもしれません。最終的なゴールと照らし合わせて、AI導入が適しているか検討しましょう。

費用対効果の算出

AI導入には初期費用がかかります。また、精度を高めるための学習やチューニング、他社サービスを利用する場合の利用料など、ランニング費用もかかります。これらのコストとAIを導入した場合に見込める利益を算出して、費用対効果を見積もりましょう。

AIを導入する場合には、人が行っていた業務を置き換えるケースが少なくありません。このような場合には、時間対効果(かけた時間に対する成果や利益)も比較します。人が行った際とAIが行った際の時間対効果を算出して比べてみると、導入するべきかどうかが明確になります。

PoCによる実現可否の判断

AIシステムを構築する前には、要件定義を明確にすることが必要です。例えば「Webサイトにおける顧客の購買履歴と行動履歴から、次回の購入率を予測する」という要件があるとします。これを満たすために、解析のベースとなるアルゴリズムや精度を満たすためのデータ種別、出力形式などを定義します。

しかし、実際に開発してみると、選定したアルゴリズムやデータの種類などに変更が生じることがしばしばです。そのため、本開発に進む前に、最小限のコストで実証実験する「PoC(Proof of Concept, 概念実証)」を実施することが重要です。

PoCによって自社の課題解決の実現性をチェックしておくことで、無駄な工数や費用が生じるリスクを低くできるでしょう。

データ収集・蓄積

AIはデータ数が多いほど性能が高くなるのが一般的です。例えばネットショッピングのレコメンド機能は顧客数が多いほど高くなり、音声認識機能はサンプル数が多いほど精度が上がりやすい傾向があります。

AIを導入するためには、必要なデータを集めるか、ベンダーから購入します。この際、データ量が大きくなるほど必要となるストレージの容量が増えることに注意しましょう。処理に必要なCPUやメモリのスペックも高くなります。そのため、AI導入を検討する際には、自社の課題解決に必要なデータ量をあらかじめ推測しておくことも重要です。

システム構築

AI開発のプロジェクトを成功するためには、ビジネス側と開発側の密接な協力が必要です。ビジネス側が求めている機能と技術的な条件を擦り合わせながら開発を進めなければ、実用レベルのAIシステムは構築できません。また、求めているAIと全く違うものが開発されてしまう可能性もあります。

自社に人材がおらずAI開発をアウトソーシングする場合にも、何を実現したいのか、技術的に可能なのかをしっかり話し合うことが必要です。

AIの導入を成功させるポイント

一般的な製品開発と異なり、AIは導入後の運用フェーズにおいても学習を続けさせることが一般的です。また、現状に合わせてチューニングしていくことも必要になります。

AIの運用を開始した後は、どのようなことに注意すればよいのでしょうか。ここでは、AIに判断を任せすぎてしまうことで起きる弊害や、運用後のフィードバックの重要性について、それぞれ解説します。

AIに任せきりにしないこと

AIは万能ではありません。AIシステムによっては、データを入力するだけで回答を出力するものもありますが、それが間違っている場合もあります。過度にAIに依存してしまうと、顧客の不利になる情報を配信することや、自社のマーケティングを誤ってしまうなどのリスクが生じます。

AIは人間が使うツールであるという認識が重要です。責任者をつけてAI運用を管理するなど、社内の体制作りも進めましょう。

効果的な「運用」を行うこと

導入初期は開発フェーズと運用フェーズを区別することが、実用レベルに効率的に引き上げるために重要です。

開発フェーズではAIを適用する範囲を限定して、基本的な機能をチェックすることが重要です。

運用フェーズにおいては、現場からの運用結果や意見などを積極的に取り入れましょう。運用してみると想定外のパターンが出てくることが多いため、現場のフィードバックが精度向上のために重要です。

AIの活用事例

最後にAI活用の具体例をいくつかご紹介します。

AIを用いた予知保全

工場などで予期せず機器が故障すると、生産が停止し多大な損害が発生するおそれがあります。

これを予知し避けるためには、電流・電圧、振動、温湿度、音声など様々なセンサー情報をもとに異常状態の予測を行う必要があります。ここにAIを適応することで、従来見過ごしてきた異常も24時間監視が可能になります。特に「エッジAI」により処理することでネットワーク、ストレージへの負荷が大きく軽減します。

AIでの音声処理

スマートフォンやスマートスピーカーなどの音声操作やコールセンター、電話予約などの自動応答サービス、リアルタイム翻訳サービスなど、音声を用いたサービスは幅広く導入が始まっています。すでに多くのサービスでAIの導入が始まっており、これからも発展していくでしょう。

AIは音声認識と自然言語認識といった技術分野だけでなく、音声抽出や音源分離、高音質化処理といった技術分野に活用されています。このような処理は、リアルタイムで行うことが要求されており、エッジでのAI音声処理のニーズが高まってきています。

AIで画像解析

画像解析は、AIの活用が最も多く行われている分野の一つです。画像を解析することで来客や作業者の分類や行動解析を行うことができ、マーケティングや生産性向上などに大きく寄与することができます。その他、河川の氾濫や鳥獣被害の監視など災害予知や農作物の生産性向上にも活用されています。

画像はデータ量が大変多く、画像解析をクラウドで行うと、ネットワークの負荷が大きくなってしまいます。近年では、エッジデバイスの処理能力が向上し、クラウドが担ってきた処理を一部エッジで行えるようになってきました。例えば、インテリジェントビジョンセンサー(IMX500)や、Spresenseなどのシングルボードコンピュータによる「エッジAIデバイス」が導入されてきています。

まとめ

AIは画像認識、音声認識や自然言語処理、予知保全など、数値化してパターン認識できる分野を中心に活用されています。AI導入の際には、何を実現したいのか目的を明確にしてシステム構築を進めていきましょう。

Spresenseは、IoT向けスマートセンシングプロセッサ搭載ボードです。予知保全、画像認識、音声認識など、さまざまなAIの応用が、手軽にお試しいただけます。高い演算能力で複数マイクでの集音も実現にしつつ、超低消費電力によって発熱を抑えて高い信頼性を担保しています。Spresense に組み込むためのAI統合開発環境も用意されており、自社に最適なエッジAIも実現可能です。是非、お試しください。

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