エッジコンピューティングのメリット・デメリットは?活用事例や今後の姿とともに解説
エッジコンピューティングにはたくさんのメリットがあるため、ビジネスや生活の一部にも導入され始めています。しかし、エッジコンピューティングにはデメリットもあるため、注意が必要です。
この記事では、エッジコンピューティングの特徴とともに、メリット・デメリットについて解説します。エッジコンピューティングをうまく活用するための参考にしてください。
目次
エッジコンピューティングとは
そもそもエッジコンピューティングとは、どのようなものなのでしょうか。ここでは、エッジコンピューティングの基本を解説します。
エッジコンピューティングの概要
エッジコンピューティングとは、ネットワークの末端にある機器でデータを処理する方法です。「エッジ」とは、IoT器機やモバイル機器などを表しています。エッジコンピューティングを行えば処理を分散できるため、システムの負担を軽減できます。
エッジコンピューティングの仕組み
エッジコンピューティングは、データの発生源のすぐ近くで処理を行うのが大きな特徴です。ネットワークの中心にはデータセンターやサーバーなどのシステムがあります。それに対し、データの発生源は「エッジ」と表現されています。エッジとは日本語で表すと「端」のことです。エッジでデータを処理したうえで、ネットワークの中心にあるシステムへ送信します。
エッジコンピューティングが注目されるようになった背景
エッジコンピューティングの活用が広がっているのは、クラウドコンピューティングの課題解決につながるためです。IoT機器では膨大なデータを収集できますが、すべてをデータセンターやサーバーなどでまとめて処理すると大きな負担がかかります。しかし、それぞれのエッジでデータを処理して本当に必要なデータのみを送信すれば、その負担を大幅に軽減できます。
本格的に5GやLPWAが普及すると、エッジコンピューティングが役立つ場面はさらに増える可能性が高いです。
エッジコンピューティングの長所(メリット)
エッジコンピューティングにはさまざまな長所(メリット)があります。ここでは、具体的に解説します。
データ通信量を減らせる
エッジコンピューティングでは、取得したデータを厳選したうえでネットワークに送信します。そのため、データ通信量の削減が可能です。やり取りするデータ通信量が少なくなり、混雑が発生しにくくなります。通信の安定により、最適化を実現できるでしょう。
また、データ通信量が減れば毎回の転送にかかる料金も少なくなるため、経済的です。必要なデータのみのやり取りにより、効率的な通信を実現できます。
高速でデータを処理できる
エッジコンピューティングによりデータの処理を分散すると、不要なデータはデータセンターやサーバーへ送信されません。それぞれのエッジでデータをスピーディに処理し、必要なデータのみをやり取りできます。
IoT機器を導入しているシステムでは、リアルタイムでのデータの共有が求められる場面が多いです。エッジコンピューティングを活用すれば、タイムラグを生じさせずスムーズに必要なデータをやり取りできます。
セキュリティを強化できる
エッジでデータを処理すると、慎重に扱わなければならない情報をネットワークに流す前に加工できます。最低限必要なデータだけを残したり、個人を特定できない状態にしたりできます。重要なデータが漏洩するリスクを防げるようになり、セキュリティの強化が可能です。
また、ネットワークを通じてやり取りするデータの総量を減らせるため、情報漏洩が発生する機会も少なくなります。
障害発生時のリスクを抑えられる
クラウドサーバーにすべてのデータを集めて処理していると、何らかのトラブルによりサーバーがダウンした際に大きな被害が出ます。サーバーが復旧するまではデータの処理ができなくなり、ビジネスチャンスを逃すリスクもあるでしょう。
しかし、エッジコンピューティングを行っている場合、万が一クラウドサーバーがダウンしても一部の機能は継続的に使用できます。引き続きデータを処理して活用できるため、被害も最小限に抑えられます。
エッジコンピューティングの短所(デメリット)
エッジコンピューティングには短所(デメリット)もあります。ここでは、具体的に解説します。
データの一部が消失する
エッジコンピューティングでは、エッジ側でデータの必要性を判断して処理し、ネットワークへ送信します。エッジ側で不要と判断されたデータは削除されるため、後から別のデータを使用したいと思っても取得できません。
エッジが取得したデータを有効活用するには、データをどのように保存するか検討する必要があります。エッジが不要だと判断したデータも保存できる仕組みを作れば、より柔軟にデータを活用できるでしょう。
初期コストがかかる
エッジコンピューティングを導入するには、高性能なCPUとメモリ容量が必要です。そのため、ある程度の初期投資が必要となります。ただし、金銭的なコスト以上に手間や時間がかかるため、計画的に導入を進めるべきです。
Spresenseを使用すれば、基板にかかるコストを低く抑えられます。また、Spresenseは省電力で使用できるため、ランニングコストも削減可能です。
エッジコンピューティングの活用事例
エッジコンピューティングはさまざまなところで活用されています。ここでは、エッジコンピューティングの具体的な活用事例を紹介します。
機器の異常予知
工場やオフィスの設備等に使用される機器が、予期せぬ異常により停止してしまう場合、大きな損失につながります。これらを未然に防ぐために、振動や音声、電流電圧、温度など様々な情報をセンシングし、状態をAIなどを使って予測しています。
機器が多くなれば、より多くのセンシングデータを常時取得しながら処理を行うため、エッジ端末でのエッジコンピューティングが重要になってきます。
建設現場での活用
建設現場では、発信機を使用して作業員や重機などの動線や作業者の体調などを把握する仕組みが活用されています。モバイル機器などのエッジ端末で位置情報や各種センサー情報を受け取れるようにしており、人員を適切に配置したり危険を予測したりするために役立てられています。
エッジ端末を活用してエッジコンピューティングを行うため、データのやり取りも最小限で済ませることが可能です。このため、不要なデータをやり取りする必要がありません。通信回数も削減できます。
人物行動分析
人物行動分析は、人の動きをもとにさまざまな予測を立てる手法です。たとえば、店舗に設置しているカメラ映像をエッジ側で処理できるようにすれば、解析や検証を済ませたうえでクラウド側へ送信できます。クラウド側には不要なデータが転送されず、人物座標など加工が済んだデータのみを送ります。
余計なデータをやり取りする必要がないため、運用にかかるコストの削減が可能です。また、個人情報の保護にもつながります。
気象予測
エッジコンピューティングは、気象予測シミュレータと組みあわせて活用できます。従来のクラウドコンピューティングでは、トラフィックの混雑や遅延などの課題が指摘されていました。しかし、エッジコンピューティングと気象予測シミュレータを活用すれば、IoTセンサーから取得した気象情報やシミュレーションデータを組みあわせて、より細かい予測を実現できます。
広域範囲の気象予測だけでなく、局地的な気象予測も可能です。農業や交通での活用も期待されています。
自動運転
AGVやドローンなどの自動運転を実現するには、データをスピーディに処理する必要があります。リアルタイムでスムーズにデータを共有できる通信環境も必要です。エッジコンピューティングを活用するとクラウドサーバーの負担を軽減でき、タイムラグなくデータをやり取りできるようになります。そのため、どのような場面でも素早い判断ができるようになるでしょう。
自動運転に対する需要は高まっていくと考えられるため、エッジコンピューティングの活用がさらに進む可能性が高いです。
エッジコンピューティングの今後
エッジコンピューティングは、さまざまな分野で活用され始めています。研究や実用化が進められており、今後はさらに幅広い場面で便利に活用できるようになる可能性が高いです。
エッジコンピューティングはIoTやAIと組みあわせると、さらに活用の幅が広がります。今後は5Gのネットワークも本格的に普及すると考えられるため、よりスピーディにデータをやり取りできるようになるでしょう。エッジコンピューティングにはさまざまな可能性があり、大きな期待が寄せられています。