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AI×農業「スマート農業」とは?|基礎知識と実用例を解説!

この記事では、スマート農業のための機器開発や利用を検討している人に向け、「AI×農業」について解説します。スマート農業の概要、メリット・デメリット、実用例、スマート農業が推進される背景などを解説しているので、農業へのAI活用に役立ててください。

目次

AI活用が進むスマート農業とは

スマート農業とは、AIやIoT、ロボット、ICTなどの先端技術を組み合わせた農業のことです。先端技術の活用によって、作業の自動化や収集したデータを活用した効率的な農作業が可能になります。

なお、「AI農業」は、Agri-Infoscience(アグリ・インフォサイエンス)農業の略で、人工知能という意味はありません。AI農業とは、熟練の農家の技術やノウハウをICT活用によってデータ化し、継承することを目的とした農業です。

スマート農業の5つのコア技術

ここでは、スマート農業を支えるコア技術である、AI、IoT、ロボット、ビッグデータ、エッジコンピューティングの5つを解説します。

AI×農業

車の自動運転やCT画像の解析などに用いられているAI(人工知能)は、農業にも応用されています。例えば、各種センサーを搭載したドローンの自動運転による農薬散布や、作物の生育状況をカメラで撮影・解析して収穫時期を判定するなどです。また、精度の高い気象情報の解析にもAIが活用されています。

IoT×農業

IoTとはInternet of Things(モノのインターネット)の略で、小型端末やセンサーがインターネットに接続されることをいいます。たとえば、小型カメラの画像データを中央処理システムに送って病害虫の有無をモニタリングすることが可能です。

また、無数の場所に設置した温度センサーのデータから、細かな生育環境をチェックする試みも行われています。

ビッグデータ×農業

気象データや広範囲の栽培状況などはビッグデータとして収集され、農業に活用されています。農地での詳細なデータをビッグデータとして集められるようになったのは、IoTの実用化に拠るところが大きいとされています。

エッジコンピューティング×農業

エッジコンピューティングとは、ボードコンピュータなどの端末側で、自律的な処理を行う技術です。

従来は、端末側から受信したデータを、クラウド上の中央処理装置で処理していたため、通信量と処理負荷の増大が大きな問題でした。エッジコンピューティングによって、これらの課題を解決できます。

ロボット×農業

ロボット技術の応用は、主に人の作業を置き換えることに役立てられています。たとえば、自動運転のトラクターや、先に紹介した自動で農薬散布ができるドローンなどは、その代表例です。

これらのなかには、AIや高度なセンサー制御技術が搭載されているものもあります。

AI×農業の3つのメリット

ここでは、AI活用のメリットである収穫量アップ、コスト削減、ノウハウの蓄積・継承について解説します。

AI×農業のメリット1:収穫量アップ

ロボットの導入によって長時間作業が可能になり、また、各種センサーで収集した情報を元に農業を最適化できます。結果として、収穫量アップが見込めます。

AI×農業のメリット2:コスト削減

AIを搭載したコンバインや田植機の導入によって、省人化・効率化によるコストカットが見込めます。また、農業従事者の肉体的負担も減らせるため、高齢化が進む農家へのサポートにもなります。

AI×農業のメリット3:ノウハウの蓄積・継承

各種センサーから情報を収集することで、ノウハウの蓄積・継承を定量的にできます。これらのデータを活用すれば、知識や技能がない農業従事者でも作物を効率的に育てられるようになります。

AI×農業の3つのデメリット

AIを農業に活用するにあたっては、コストメリットが低い、開発工数がかかる、標準化しにくい、などの課題があります。

AI×農業のデメリット1:コストメリットが低い

AIを農業に導入するには、ロボットの購入や開発、ICTを活用するための人材育成などがあり、コストメリットが高いとはいえません。

このデメリットを補うためには、汎用ボードコンピュータを用いて開発するなどの対策が必要です。イニシャルコストを抑えられるうえ、その後の開発コストも小さくできます。

AI×農業のデメリット2:成果が出るまでに時間がかかる

農業分野では、年単位のサイクルでしか成果を出せないこともめずらしくありません。IT分野の人材が慢性的に不足しているなか、長期間人材を確保して実用化につなげるのは困難です。

開発ハードルを下げ、成果を出すまでの期間を短縮するには、ベースとなる既存の機器を利用する方法があります。たとえば「SPRESENSE」は、ソースコードやハードウェア情報が一般公開されているため、成果が出やすい開発環境を整えられます。

AI×農業のデメリット3:標準化しにくい

農業環境は地域の気候や土壌などの条件がケースバイケースであり、標準化をしにくい面があります。近年、国はこの課題を克服するために、広範囲の農業実証プロジェクトを立ち上げ、情報共有を進めています。

AI×農業の実用例7選

ここからは、AIが農業にどのように活用されているのか、具体例を7つ紹介します。

AI×農業の実用例1:牛の行動観察システム

牛に首輪型センサーを取り付けて、複雑な牛の飲水・摂食、腹臥位、立位、歩行などの行動や姿勢の情報から、AI処理により、発情、分娩の兆候が見えだしているのか、あるいはストレスを感じているのかといった状態を推定することで、酪農・畜産業におけるアニマルウェルフェアの向上を実現しています。

このシステムに欠かせない条件は、牛に取り付けるための処理能力と低消費電力を両立する機器を導入することです。

AI×農業の実用例2:葉色解析サービス

ドローンで上空から農作物を撮影し、その葉色を解析して生育状況を監視したり、収穫時期を判断したりする技術が実用化されています。

ドローンが収集したデータを別の装置のAIに解析させて、膨大な数の作物を短時間で効率的に判定できることが特徴です。これにより、農地全体の見回る作業を大幅に軽減できます。

AI×農業の実用例3:農薬散布ドローン

ドローンによる農薬散布は、個人農家でも一般的になってきました。なかでもAI搭載のドローンは、決められたエリアで障害物を避けながら完全自動走行を実現できることが特徴です。

また、植物の生育状況や害虫・病気による被害などの状況などを的確に撮影できるセンサーとその画像解析処理をエッジコンピューティングのエッジAIで実現すれば、ドローンが自律的に、病害虫の発生を検知した作物にのみ農薬散布することも可能です。

AI×農業の実用例4:クラウド型営農⽀援サービス

人工衛星から撮影した農地の画像を解析し、営農情報のレポートを有料で配信する業者も出てきました。作物の種類や解析する項目などを入力して登録すると、後日レポートを受け取れる仕組みです。

AI×農業の実用例5:AI搭載収穫ロボット

収穫対象をcm単位で画像認識して、最適なタイミングを判断できるロボットが開発されています。さらに生育情報を判定するだけでなく自動収穫までできるものもあり、省人化に役立てられています。

ただし、自動収穫ロボットは高額であることが多いため、収穫時期にレンタルできるサービスも提供されています。

AI×農業の実用例6:自動耕運ロボット

従来の耕運機に自動運転機能を付けたロボットが一般的になってきました。日本では高齢化に伴う廃業や業務委託によって、農地が拡大する傾向にあります。そのようななか、自動耕運ロボットは労働力不足解消に役立てられています。

AI×農業の実用例7:IoTによる広域栽培モニタリング

IoTによる広域栽培モニタリングは、高い需要がありながら、通信設備や電源の設置場所やコストに課題がありました。

しかし、近年は省電力広域無線通信技術の進歩により、特別な施設を導入する必要がなくなっています。LTE-M/NB-IoTのようなLPWAを使えば、例えば、日照計や温度計、水分計などの各種センサーを搭載した装置から直接クラウドへの送信や、または簡素な中継機器経由でのクラウドへの送信が可能で、クラウド上に多くの機器からのビッグデータを収集しモニタリングすることが可能になってきました。

これらの広域なモニタリングデータは農業栽培に有効に活用できる可能性が高いと考えられています。

AI×農業が日本国内で増える背景

なぜ、AI活用をはじめとしたスマート農業の普及が進んでいるのでしょうか。その背景を解説します。

労働者不足

日本の労働者不足問題を解消することを目指し、官民を上げてAI活用を含めたスマート農業が推進されています。スマート農業によって、作業の効率化や人出不足を補う各種サービスの拡充が進めば、農業生産性が向上し少ない労力で大きな生産量を確保することが可能になります。

また、農業では、風、霜、暑さなどの自然の変化のような環境による影響は大きなリスクになります。これらのリスクに対して、今まではベテラン農家さんのみが持つ勘や経験といったノウハウに頼っていました。

これらのノウハウをAIによってデータ化し共有することが可能になることで、より品質が高く高付加価値の作物を新米農家さんでも作ることができるようになります。さらに、各農家さんの持つビッグデータを再度収集しAIによる学習をおこなうことで、よりスピーディーな品種改良の実現も行われることになります。これらによって、農業への新規参入者も増えることが期待されています。

SDGsへの対応が求められている

スマート農業はSDGsの一翼を担う重要な分野です。有機栽培や減農薬栽培がスマート農業で容易になると期待されています。これは、地球環境に配慮した持続可能な農業であるとともに、長期的な収穫量アップにつながり、飢餓問題を軽減することにもつながるからです。

食料自給率の向上

世界の穀物などの需給は中長期的にひっ迫すると予想されています。官民を挙げて食料自給率の向上が望まれるなか、その解決手段としてスマート農業はさらに推進されていくでしょう。

まとめ

AIやエッジコンピューティングなどの技術を活用したスマート農業が進んでいます。農家にとっては収穫量アップやコスト削減、ノウハウの蓄積などのメリットがあります。また、ビジネスとしても成長が期待できる分野です。

本記事でも取り上げたソニーセミコンダクタソリューションズの「SPRESENSE」は、センシングカメラやドローン、スマートスピーカーなどのIoT向けスマートセンシングプロセッサ搭載ボードの活用に興味がある人におすすめの製品です。SPRESENSEは高い信頼性・演算能力と省電力を両立し、複数の集音マイクなどの各種センサーを拡張できるため、幅広い用途に応用できます。

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