IoTビジネスとは?IoTでできることからトレンドまで詳細解説

近年、IoTという言葉がよく聞かれるようになりました。IoTを活用したビジネスが注目され、現場の課題解決のために導入を検討している人も少なくありません。
この記事ではIoTをビジネス活用したい人向けに、IoTの基礎を解説し、活かし方やビジネスにおける導入事例も紹介しています。IoTに関する知識を深め、問題解決の糸口になれば幸いです。
目次
IoTビジネスとは何か
IoTを活用した「IoTビジネス」とは、どのようなものでしょうか。IoTやその背景と合わせて解説します。
そもそもIoTとは
IoTとは、モノをインターネットにつなぐことで、データの取得や遠隔操作を可能にする仕組みです。「Internet of Things」の略語で「モノのインターネット」ともいわれ、多くの企業が自社ビジネスに取り入れようとしています。
総務省の「令和元年版情報通信白書」によると、世界のIoTデバイスは2021年に447億9,000万台になる予測です。
※出典:総務省|令和元年版情報通信「白書 IoTデバイスの急速な普及」
IoTビジネスとは
IoTビジネスは、モノとインターネットを組み合わせた製品・サービスを提供することであり、概念自体は難しくありません。例えば、冷蔵庫にIoTを搭載すれば、庫内の把握が可能です。
鉄道やバスに取り入れれば、リアルタイムでモニタリングができ、故障の軽減や運行管理に役立つでしょう。
IoTビジネスは、製品・サービスを提供するだけにとどまらず、顧客が行う作業や操作、運営といったオペレーションを支援できる可能性が高いといえます。
IoTが普及する背景
無線通信技術の普及により進化したIoTは、さまざまなものに搭載されるようになりました。その背景には、スマートフォン需要の拡大や機器のコストダウンがあげられます。
IoTという言葉が最初に登場するのは1999年ですが、一般的に認識されるようになったのは、2010年代の後半です。
その頃には多くの人がスマートフォンを使うようになり、データを取得するためのセンサー機器や通信モジュールのコストも世界的に低下、IoTの導入が容易になったと考えられます。
IoTビジネスに活かせることの具体例
ここからはIoTの活用により、ビジネスにおいて「できること」は何かを具体例とともに解説しましょう。
遠隔操作
IoTの導入により、離れた場所であっても運転・停止などの遠隔制御が可能です。家庭を例にすると以下のような操作が考えられ、防犯面も考慮した快適な暮らしを実現できます。
・帰宅前にエアコンを作動させ、室内を快適な温度にする
・外出先から玄関や部屋の照明をつける
・消し忘れた家電のスイッチを切る
スマートファクトリーでの遠隔管理
産業でのIoT活用では、スマートファクトリーや産業機械を遠隔で管理できます。遠隔で行うことにより、危険を伴う場所でも安全な作業が可能です。さらに業務効率化や経費削減、一元管理といったメリットも期待できます。以下はおもな具体例です。
・製造ラインの動作確認・モニタリング
・生産数や補充部品のモニタリング
・異常兆候の把握・通知
介護施設の管理
介護施設では、介護従事者の負担を減らしながら、快適な環境を提供できます。センサーにより入所者の離床や行動が把握できれば、人手が減る夜間時でも見守りが可能です。書類を電子化すれば作成時間が短縮され、情報共有もしやすくなるでしょう。
・入所者の健康状態や安全の見守り
・徘徊などの症状がある入所者の行動を把握
・カルテやプラン作成業務の支援
農業での活用
農業人口の減少と高齢化による課題を抱える農業では、IoTの活用により、ビニールハウスや水田の無人管理が可能です。データは自宅などの遠隔地から把握できるため、時間やコストの削減に役立ちます。
また、データの蓄積・分析を行えば、リスクへの対策を検討し、収穫効率の向上も期待できるでしょう。
・ビニールハウス内の温度・湿度管理
・水田の水位・水温の確認
IoTビジネスのトレンドを知る
さまざまな場面で活用されるIoTですが、ビジネスで活用するにあたり、押さえておきたいトレンドを紹介します。
AIをIoTデバイスに搭載
IoTデバイスにAIを搭載することで、リアルタイムなデータの収集・分析・フィードバックが可能になります。これは「エッジコンピューティング」といい、端末そのもの、あるいは近くにサーバーを置き、データ処理を行う技法です。
また、エッジコンピューティングにAIを搭載したものを「エッジAI」と呼びます。クラウドとのやり取りが不要となるため、素早く正確な対応ができ、以下のようなメリットが期待できます。
・負荷の分散
・通信遅延の低減
・通信コストの削減
・セキュリティ強化
・リアルタイム性の向上
膨大なデータを必要とする産業機械のIoTアプリケーションでは、高い負荷によるネットワーク遅延の解消が成否を分けるため、エッジAIは欠かせない技術といえるでしょう。AIを搭載したIoTデバイスは、さらに普及が進むと考えられます。
ビルトイン型セキュリティ
ビルトイン型セキュリティとは、ソフトウェアとハードウェアの両方を備え、環境や脅威の変化に対応できるセキュリティ対策です。
これまで産業用制御システムに接続したIoTシステムは、物理的に隔離されているため、必要最低限のセキュリティ対策でも安全だと考えられていました。
しかし、高度化・巧妙化した近年では、マルウェア感染などのセキュリティ問題が顕在化しています。IoTシステム全体の保護・強化を行い、サイバー攻撃に備えることが重要です。
拡張現実の拡大
拡張現実は「AR」とも呼ばれ、実際の風景にCGなどの情報を重ねて表示することで、現実世界に仮想の空間を作り上げる技術です。
IoTの可能性を高めるカギとして注目されており、技術進歩に伴い、多くの業界で普及が見込まれます。
例えば、IoTとARを組み合わせることで、膨大な取得データを直感的に表示できるため、素早い理解と効率的な分析が可能です。遠隔による指導トレーニングやマニュアルのデジタル化にも役立つでしょう。
計画と検証を進めて、ネットワーク・セキュリティ・プライバシー・テクノロジーを適切に選択し、戦略を策定することが必要です。
プライバシーへの配慮
IoTで計測・収集されるデータは、内容や目的が分かりにくいとされています。個人情報が含まれる可能性も否定できませんが、IoTでは相当数のデータを収集することから、プライバシー要件を満たすことは困難です。
日本で個人情報を取得する際には、個人情報保護法で定められた「適正な取得」が必要であるため、パーソナルデータの扱いには十分配慮すべきでしょう。世界的にもプライバシーに関する規制は厳しくなり、厳格な罰則が科せられた事例も存在します。
取得した情報の不適切な取り扱いや漏えいは、企業の信頼を失い、経営に与える影響は計り知れません。IoTの活用においてプライバシーへの課題は、避けては通れない問題です。
自律デバイス
IoTがもたらす効果は4段階に分類され「監視」「制御」「最適化」「自律化」と進化します。
「自律化」とは、最低限の指示で自律的に最適な状態を判断し、動作する状態です。プログラム通りに動く「自動化」とは異なります。
自動運転車やロボット、ドローンなど動くマシンでは、自律化が欠かせないトレンドであり、自律化の機能を持つ「自律デバイス」の進歩は飛躍的です。
IoTデバイスでは、環境の認知と受信データを組み合わせて自律の概念を拡大させています。工業用機械や農業への導入も期待され、IoTデバイスも今まで以上にその重要性が高まるでしょう。
IoT構成に重要な要素
ここでは、IoTを構成する際に重要となる4つの要素について説明します。
デバイス
デバイスとは、前述した「モノのインターネット」の「モノ」を指します。IoTを搭載した電化製品・スマホ・街の設備や機器・自動車など人が実際に使用する端末のことです。
役割は大きく分けて2つあります。1つ目は、デバイス自身や周辺環境の状態を情報として収集し、システムに通知する「センシング」という仕組みです。
もう1つは「フィードバック」と呼ばれ、システムからの通知により情報の表示や動作を行います。
センサー
センサーは、デバイスに組み込まれている電子部品です。温度・湿度・圧力・光・地磁気・加速度・音などの動きや変化を検知し、状態を測定します。
組み合わせることで、より複雑な状態を測定することも可能です。現在のスマートフォンには、多くのセンサーが組み込まれており、センサーの小型化・小消費電力化・小コスト化・通信整備の成功がIoTの実現につながっています。
ネットワーク
ネットワークは、スマートフォンなどのデバイスやサーバーにデータを送るための通信手段です。電波や光を使用した無線通信が一般的で、とくに「近距離無線通信」と「省電力広域通信(LPWA)」が注目されています。IoTでは、スピードよりも消費電力や小型軽量性を重視されます。
以下に各通信の例を挙げます。
- 近距離通信
・Bluetooth
・Wi-Fi
・WiSUN、
・EnOcean
など。
- LPWA
・LTE-M
・NB-IoT
・ELTRES
・LoRa
・Sigfox
・Zeta
など。
アプリケーション
アプリケーションはデータ処理や分析、可視化などを行うプログラムです。IoTでは、センサーから受信したデータを元に機能を返します。
利便性が高いことから、パソコンやスマートフォンの使用が一般的です。構築には、プログラミングやネットワークの知識、さらにAIを搭載する場合はAIの専門知識が必要になります。
まとめ
IoTビジネスの展開を加速させるためには、エッジコンピューティングが必要不可欠です。本格的なエッジコンピューティングを可能にしたいならば、「Spresense」が適しているでしょう。
Spresenseは、Arduino 互換のソニーのボードコンピュータで、ソニー独自のセンシングプロセッサ CXD5602 を搭載したエッジコンピューティング。低消費電力で、乾電池でも動作可能です。
IoT向けプロセッサである「CXD5602」は、GPSによる測位機能、ハイレゾリューションオーディオの再生・録音機能、低消費電力のマルチコアを内蔵し、ハイパフォーマンスを実現しています。