IoTを企業が活用する際の問題点は?スムーズに活用するためのポイントを解説

IoTを応用できる分野は広く、うまく活用すればさまざまなことを実現できます。ただし、IoTにはメリットだけでなく問題点もあるため注意が必要です。この記事では、IoTを適切に活用したいと考えている人に向けて、IoTの特徴や問題点について解説します。問題点の解決方法も解説するため、ぜひ参考にしてください。
目次
IoTとは何か?
まずは、IoTとは具体的にどのようなものであるか確認しましょう。ここでは、IoTの意味と実現できることについて解説します。
IoTの意味
IoTとは「Internet of Things」を略した表現であり、日本語で表すと「モノのインターネット」となります。IoT技術の登場により、インターネットに接続できるのはパソコンやスマートフォンだけではなくなりました。家電、自動車、工場の機械などあらゆるものがインターネットに接続でき、これまで以上に便利に活用できるようになっています。
IoTで実現できること
IoTを活用すれば、離れた場所にあるモノの遠隔操作も可能です。また、離れている場所にあるモノの状態を正確に把握できるようになります。
人やモノの動きもリアルタイムで検知できるため、検知されたデータにあわせて機器を作動させると、システムを自動化できます。さらに、モノとモノをつなげば、双方を連携させられます。これは「Machine to Machine」の頭文字をとってMtoMとよばれている方法です。
IoTを活用するメリット
IoTを活用すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、具体的なメリットについて解説します。
新しいビジネスを創出できる
IoTを活用すれば膨大なデータを集められるようになります。たとえば、消費者の日々の行動に関するデータを集めると、企業はターゲットのニーズをより細かく捉えられます。それを商品やサービスの開発に活かせば、よりよいものを生み出せる可能性が高まり、これまでにない新しいビジネスを生み出すきっかけにもなります。
古い設備をデジタル化できる
最新の設備をそろえるにはまとまった予算が必要になるため、仕方なく古い設備を使い続けている企業も少なくありません。しかし、古い設備にIoTのセンサーを取り付けると、新しい設備のようにデータを有効活用できるようになります。設備の種類や使い方にもよりますが、IoTの技術を活用すれば低コストで高いパフォーマンスを実現できます。
業務効率化や利便性向上につながる
IoTなら、業務の状況や機械の稼働状況も客観的に可視化できます。データの一元管理により改善点をみつけやすくなり、業務効率化を目指せます。
また、自社が提供しているサービスにもIoTを取り入れれば、消費者の状況把握もスムーズです。サポートやアフターサービスも提供しやすくなり、消費者にとっての利便性も向上します。
コストを削減できる
IoTを導入するとさまざまなデータを得られます。データを分析すれば業務の状況を数値で把握できるため、最適化が可能です。たとえば、データをもとにして社内体制や環境をチェックすれば、コストを削減できる部分も明白になります。削減したコストをほかの部分に回すと、より効率的にビジネスを展開できます。
IoTの活用事例
IoTはさまざまな分野での活用が期待されています。ここでは、IoTの具体的な活用事例について解説します。
製造業
製造業では、工場の機械にIoTの技術を取り入れているところも増えています。機械にセンサーを取り付ければ、不良品が発生しても瞬時にチェックできます。また、機械にトラブルが生じた場合でも、原因の特定が容易です。
データを蓄積すれば、生産性を高めるための改善点も明らかにできます。データをグラフ化すると、現状がすぐにわかります。
医療
IoTは医療分野への応用も期待されています。たとえば、ウェアラブル型の体に身につけられるデバイスを患者に装着し、健康状態を常にモニタリングする方法もあります。デバイスを通してさまざまな生体データを取得できるため、患者に多くの負担がかかりません。健康状態が悪化した場合に警告する仕組みも搭載できます。
農業
農業では、IoTの技術を使って効率的に野菜を育てる仕組みの実験が行われています。たとえば、ビニールハウスの環境をIoTで監視し、温度や空調などを遠隔操作で調整します。肥料や水やりも、データに基づいた最適なタイミングで実施可能です。このような取り組みは「スマート農業」と表現されており、人手不足の解消にも役立ちます。
スマートシティ
スマートシティとは、IoTをはじめとする最新のIT技術を組みあわせて管理されている都市のことです。たとえば、街のゴミ箱にIoTを組み込み、ゴミの蓄積状況を把握します。ゴミが多くたまっているところから収集できるため、ゴミ収集の作業を効率化できます。
また、マンホールにIoTの技術を取り入れれば、リアルタイムでのデータ取得により、浸水被害の予測が可能です。IoTは、より便利で安全な街づくりのためにも活用できます。
IoT が抱える問題点
さまざまなメリットを持つIoTには、どのような問題があるのでしょうか。ここでは、指摘されている具体的な問題点を解説します。
コスト
IoTを取り入れればコスト削減を目指せますが、機器を導入する際はまとまった費用がかかります。特に、一度に大々的にIoT機器を導入する場合、費用負担は大きくなります。
また、IoTの技術は、必要な機器を導入するだけで活用できるようになるわけではありません。データを収集して分析する際にもコストがかかります。さらに、それらのマニュアル作成やメンテナンスなどにも費用がかかるため、全体的なコストをあらかじめシミュレーションしておきましょう。
正確なデータ取得と解析
IoTを取り入れ様々なデータを収集できたとしても、目的にとって有用なデータを取得できているかどうかは重要です。また、そのデータを正しく分析できなければ、せっかくIoTを取り入れても効率的な運用になりません。
目的に合わせた正しいデータの取得と解析ができるように、最適なセンサーの選択やセンサーの取り付け位置、取り付け方法などを見つけ、AIなどを利用して正しくデータを解析できる様にしましょう。また、所望の効果が出てない場合、これらを再調整しながらより効果的にIoTの運用ができるようなサイクルを回せるようにすることも効果的です。
人材不足
IoTは新しい技術であり、システムを開発するための人材がまだ十分ではありません。IoTが影響を与える範囲は広いため、さまざまなスキルを持ち合わせている人材が求められています。前述のように最適なデータ取得、解析を行うために、IoTやITの知識と技術はもちろん、物理現象の把握、対象物の性質の理解など、物事の全体像を把握して最適なシステムを作り上げるためのスキルが重要になってきます。
そのような人材が社内にいなければ、新しく採用する必要があります。今後はより多くの企業が、IoTを扱える人材の確保を目指すことになるでしょう。
セキュリティ
IoTでは大量のデータを集め、インターネットを介してサーバーへ送信します。重要な情報も多く含まれているため、責任を持って保護しなければなりません。たとえば、外部から不正アクセスを受ければ、消費者が使用しているIoT家電が作動しなくなる恐れもあります。また、フィッシング詐欺などの犯罪につながるリスクもあります。
IoTの技術を取り入れるうえでは、セキュリティ対策が必要不可欠です。考えられるリスクにあわせ、安全性を高めましょう。
プライバシー
IoTの技術でデータを収集する場合、データのなかに個人情報が含まれる可能性もあります。特に、消費者の暮らしに深く関わる機器からデータを取得する際は、プライバシーに対する配慮が必要です。
データにもさまざまな種類があるため、必ずしもすべてが役に立つとは限りません。データを取得する際は必要なデータを絞り込む必要があります。プライバシーの問題を意識し、個人情報の扱い方には十分注意しましょう。
問題点を解決してIoTを活用するためのポイント
問題点を解決したうえでIoTを有効活用するためには、意識したいポイントがあります。ここでは、具体的に解説します。
エッジコンピューティングを活用する
カメラ映像や音声データなどプライバシーにかかわるデータをそのままネットワークで通信し、クラウド処理を行うことはリスクです。これらを避けるために、エッジデバイスで特徴量抽出処理やエッジAI処理を行うことで、プライバシーにかかわるデータをネットワーク上に流さないことが可能です。これらによってプライバシーの問題を大きく低減することが可能になります。
また、データを抽象化しデータ量を削減することで、データの通信費を削減することによって通信コストや電力コストなども削減することが可能です。
Spresenseは、マルチコアで、信号前処理やエッジAIができるような演算能力を持ちます。Neural Network ConsoleやTensorFlow Lite等のツールもそろっています。是非、試してみてください。
IoTならではのセキュリティ対策を導入する
IoTのセキュリティを万全にするためには、IoTの特徴を踏まえた対策が必要です。総務省と経済産業省が公表している「IoTセキュリティガイドライン」には、IoTに適したセキュリティ対策がまとめられています。まずはガイドラインの内容をチェックし、セキュリティ対策の方針を定めましょう。そのうえで具体的な対策を講じてください。
Spresenseでは、マルチコアの利点を利用してセキュアなリソースを確保でき、外部からの攻撃を素早く検知できる「軽量プログラム改ざん検知」などのライブラリを用意しており、安全にIoTシステムを構築できます。
専門スキルを持つ人材を確保する
高度な技術を使いこなすためには、専門スキルを持つ人材が必要不可欠です。データサイエンス学部を新たに設ける大学も国内外で増加しています。そのような学部を卒業した人材の採用に力を入れれば、よりIoTの技術を活用しやすくなります。人材確保が難しい場合は、外部の有識者と連携するのもひとつの方法です。
また、近年では、それほどAIに関して専門的な知識を必要とせずに、前述に様なフレームワークやツールを使うことで、IoT機器のエッジAIやクラウド上でのAIなどを簡単に構築できるようになってきました。これらを使うことで、少しずつ専門スキルを持つ人材を補うことができるようになってきました。
自社に適した導入方法でコストを削減する
IoT化にはコストがかかるため、最初は範囲を限定してスタートするのがおすすめです。効果を確認しながら、導入する範囲を拡大しましょう。IoT化のために利用できる補助金や支援金などもあるため、うまく活用してください。
また、シングルボードコンピュータなどIoT化に役立つ機器やサービスはたくさんあるため、それぞれのメリット・デメリットなどを比較しコストメリットを計算することで、コストダウンを目指せます。
さらに、前述のようにエッジコンピューティングを利用することで、通信コスト、電力コスト、場合によっては、電池やエナジーハーベストで動作が可能になることで、電源設備の設置コストなどの削減ができ、大きなコストメリットが得られる可能性があります。
Spresenseは、エッジAIができるような演算能力を持ちながら、非常に省電力動作することが特徴です。是非、検討してみてください。
まとめ
IoTはさまざまなことを実現できる可能性があります。ただし、実際に導入するうえでは解決すべき問題点もあるため、必要な対策をきちんと取り入れ、安全かつスムーズに活用しましょう。
ソニーセミコンダクタソリューションズグループのSpresenseには、高い演算能力があり、複数マイクでの集音にも対応しています。省電力にも優れており、効率的な運用が可能です。自社のIoT化を進めるためにぜひご検討ください。