エッジコンピューティングとは何か?必要なセキュリティ対策とともに解説

エッジコンピューティングとは、端末や端末に近い場所にあるサーバーでデータを処理することです。エッジコンピューティングを活用する際は、仕組みや課題を理解しておく必要があります。
この記事では、エッジコンピューティングの概要や課題について解説します。安全に利用するために知っておくべきセキュリティ対策についても解説するため、ぜひ参考にしてください。
目次
エッジコンピューティングとは
エッジコンピューティングとは、どのようなものなのでしょうか。ここでは、エッジコンピューティングの定義や仕組みを解説します。
エッジコンピューティングの定義
エッジコンピューティングとは、取得したデータを端末そのもので処理する方法です。分散コンピューティングの手法であり、必要な処理や分析をエッジ側で済ませたうえで中央のシステムへ送信します。エッジとは「端」のことであり、データを取得する末端部分を意味しています。
エッジコンピューティングの仕組み
エッジコンピューティングでは、エッジ側でデータを素早く処理します。そのため、中央のシステムが本当に必要としているデータのみの送信が可能です。不要なデータは送信しないので、データを受け取ったシステムはデータを効率的に活用できます。また、データを厳選して送信するため通信量が少なくなり、高速な通信を実現できます。
エッジコンピューティングとクラウドコンピューティングの違い
クラウドコンピューティングは、データを一箇所に集めたうえで処理します。クラウド上にサーバーやストレージなどがあり、それぞれのエッジで取得したデータのすべてがネットワークを通じて送信される仕組みです。
それに対してエッジコンピューティングは、ネットワークに接続されているそれぞれのエッジで処理を分散しています。クラウド上のサーバーやストレージには、処理済みのデータだけが送信されます。
エッジコンピューティングが注目されている理由
なぜエッジコンピューティングは注目を集めているのでしょうか。ここでは、注目されている理由について解説します。
IoTの利便性を高められる
モバイル端末を所有している人が増えており、IoT機器が身近なところで活用されるようになりました。また、ボードコンピュータを使用すれば、IoT機器において高度なデータ処理を実現できるようになっています。エッジコンピューティングならIoT機器を有効活用しやすくなるため、多くの業界が導入しています。
デバイスが高度化している
それぞれのデバイスの性能がアップしており、単にデータを収集するだけでなくデータ処理にも対応できるようになりました。そのため、エッジコンピューティングを導入しやすい環境が整いつつあります。SpresenseのようにAIが搭載されているボードコンピュータも登場しているため、デバイスでより高度な分析ができるようになっています。
今後はLPWAが普及する
IoT活用の広がりとともに、新しい通信方式のLPWAに注目が集まっています。LPWAは「Low Power Wide Area」の略であり、長距離通信、低消費電力、低速度の特徴を備えています。LPWAが普及すれば、離れた場所にある機器同士もスムーズに通信できるようになるでしょう。
ただし、LPWAの転送ビットレートは低いため、出来るだけ転送するデータを減らす必要があります。そのため、エッジコンピューティングによる信号処理やAI処理を行い、送るべきデータを減らすことが重要になります。これによりエッジコンピューティングのニーズも高まってくるでしょう。
エッジコンピューティングのメリット
エッジコンピューティングにはたくさんのメリットがあります。どのようなメリットがあるのか具体的に解説します。
ネットワークにかかる負担を軽減できる
エッジコンピューティングを活用すれば、ネットワークにかかる負担を最小限に抑えられます。エッジ側でデータの処理を済ませることで、送信するデータ量の削減が可能です。やり取りするデータ量が減ればネットワークにかかる負担が少なくなり、スムーズな通信を実現できます。データを減少させることで通信の遅延も起きにくくなります。
セキュリティを高められる
取得したデータをエッジ側で処理するため不要なデータはネットワークに送信しません。やり取りするデータ量が少なくなり、重要な情報が外部に漏洩するリスクも抑えられます。データを加工してから送信するため、個人を特定できないよう加工したうえで共有することも可能です。
低レイテンシーでリアルタイムデータの活用がしやすい
レイテンシーとは、データの転送を要求した後、実際にデータが転送されるまでにかかる遅延時間を意味しています。エッジコンピューティングは低レイテンシーであり、スピーディにデータをやり取りできる点が大きな特徴です。データ活用の場面では、遅延が生じるとトラブルにつながるケースもあります。しかし、エッジコンピューティングなら遅延の防止が可能です。
コストを低く抑えられる
エッジコンピューティングは、エッジ側でデータの処理を行い、必要最小限のデータをクラウド上へ送信する仕組みです。そのため、データ管理の手間が少なく、必要なデータストレージの容量も最小限に抑えられます。データを扱うためにかかるコストが少なくなり、余計な費用をかけずにデータ活用を進められます。
エッジコンピューティングを活用する上での課題
エッジコンピューティングの活用においては課題もあります。ここでは、具体的にどのような課題があるのか解説します。
導入コスト
エッジコンピューティングの導入費用は、一般的なクラウドサービスの利用に比べて高めです。拠点が多ければその分だけ必要なハードウエアも増えるため、コストがかさみます。
ただし、エッジコンピューティングを導入した後は、通信コストの削減が可能です。かかる費用と削減できる費用の両方を確認し、費用対効果を検討したうえで導入しましょう。
セキュリティ
なかには、セキュリティの設定がないIoTデバイスや、セキュリティのアップデートを適用できないIoTデバイスも存在します。エッジコンピューティングを活用するうえでは、IoTデバイスのセキュリティを強化する必要があります。エッジコンピューティングを導入する際に取り入れるべき具体的な対策については次で解説するため、参考にしてください。
なお、Spresenseならプログラムの改ざんを検知などのライブラリもサポートされているため、安全に活用できます。
エッジコンピューティングを導入する際に行うべきセキュリティ対策
エッジコンピューティングを導入するなら、セキュリティ対策が必要です。ここでは、具体的なセキュリティ対策について解説します。
暗号化
エッジコンピューティングを導入する際は、用途にあわせて通信プロトコルを使い分けるのがおすすめです。たとえば、IoTデバイスとエッジサーバーの通信はBluetoothで行い、エッジサーバーとクラウドサーバーの通信はHTTPで行うのもひとつの方法です。いずれの通信においても暗号化を徹底し、重要なデータを保護する必要があります。
ゼロトラストセキュリティモデル
ゼロトラストセキュリティモデルとは、正しいIDやパスワードでログインしている場合にも、脅威が潜んでいる可能性があると考えてセキュリティ対策を行う方法です。すべてのやり取りについて認証を行い、記録を残します。また、データは必要最低限のものを開示し、情報漏洩につながらないように配慮します。
エッジコンピューティングの活用分野
エッジコンピューティングはさまざまな分野で活用されています。ここでは、活用事例を紹介します。
農業
スマート農業においては、農業機器やドローンなどから取得できる膨大なデータを活用する必要があります。データ処理が遅延すると、それぞれの機器の業務効率を悪化させる恐れがあるでしょう。しかし、エッジコンピューティングでリアルタイムの情報処理を実現できれば、業務効率を向上させられます。そのため、農業においてもエッジコンピューティングの活用が進んでいます。
自動走行
自動運転においても、エッジコンピューティングによるスピーディなデータ処理が役に立ちます。自動運転では瞬間的な判断が必要であり、データのやり取りに遅延が生じると事故につながるリスクもあります。エッジコンピューティングには低レイテンシーの特徴があり、リアルタイムでの適切な判断に役立てることが可能です。
小売り
店員がいない無人店舗が設置されるようになっており、カメラやセンサーで顧客や商品を管理しています。カメラやセンサーで得られたデータはエッジコンピューティングで分析され、個数や金額が瞬時に計算されています。エッジコンピューティングならスピーディにデータを処理できるため、スムーズな買い物を実現できます。
生体認証
生体認証は、人の体の特徴をもとに個人を識別する方法です。生体認証を行うには、サーバーに登録してある個人のデータを照会する必要があります。エッジコンピューティングの技術を活用すれば、認証のたびにネットワークを経由してデータを照会する必要がありません。スピーディな認証を実現できます。
気象予測
気象予測においては、IoTセンサーから取得した気象情報やシミュレーションデータを活用できるようになっています。クラウドコンピューティングでは、データのやり取りが混雑して遅延が生じるケースがありました。しかし、気象予測シミュレータとエッジコンピューティングを組みあわせれば、局地的な予測も瞬時に行えます。農業や交通などの分野でも活用可能です。