製造業にはAIの導入が必要か?AIが解決できる製造業の課題とは

製造業が抱えるさまざまな問題を解決する糸口として、AIの導入を検討する企業が増えています。この記事では、AIを活用したいと検討している製造業の人へ向けて、製造業の課題やAIを導入するメリット、AIの活用の仕方について解説します。最後まで読んでいただければ、AIが製造業の課題を解決できるものであることがわかるでしょう。
目次
製造業が抱える課題
ここでは、日本経済全体の課題と製造業の多くの企業が抱えている課題について、あらためて確認しておきましょう。
DX推進の流れと2025年の崖
経済産業省は、2018年にデジタルトランスフォーメーション(DX)に関するレポートを発表しています。DXとは、既存システムを一掃してデジタル技術を導入し、新たな価値を生み出す考え方です。
同レポートでは、「2025年の崖」と題した将来に起こり得る日本経済の問題についても警鐘を鳴らしています。2025年の崖とは、既存システムを継続して利用し続けた場合、2025~2030年の間に最大で年間12兆円もの経済損失が生じるリスクのことです。
企業の多くは、デジタル化に対応できるリソースが不足しており、具体的な戦略につなげられていません。既存システムがブラックボックスしていて、ランニングコストの負担もあり新たなシステムの導入ができないといった課題が山積しています。
2025年の崖が現実化すれば、日本は諸外国から遅れをとることになります。企業が継続的な経営を行うには、意識改革が欠かせません。DXを導入する企業は年々増えており、流れに乗り遅れれば、勝ち抜くことはできないでしょう。
人材不足
経済産業省の調査によると、2017年12月時点において製造業の94%が人材不足を課題に挙げています。そのうちの約3割がビジネスに影響が出る大きな課題として認識しており、事態が深刻化していることはいうまでもなく明白です。なかでも、技能人材の不足が深刻化しています。人材不足によって、倒産に追い込まれている企業も少なくありません。
人材不足の原因の1つは少子高齢化による労働生産人口の減少です。また、製造業に対する「汚い」「きつい」「危険」といったネガティブなイメージが強く、製造業を希望する人も減っています。これまで製造業を支えてきた世代が現役引退を迎える企業も多く、即戦力となる技術をもつ人材の確保に課題が残されています。
※参考:製造業における人手不足の現状および外国人材の活用について|経済産業省 製造産業局
品質のばらつき
製造業では目視や手に取って行う作業が多く、人によって品質にばらつきが出やすいといった課題があります。扱う材料の種類や設備の状況、作業環境なども、品質のばらつきを生む要因になるでしょう。人が作業を行う以上、人為的なミスをゼロに抑えることは現実的に不可能です。
こういった課題を、これまでのものづくりでは、熟練工が支えていました。彼らの経験と長年培った感覚的なものが品質を支えてきたのです。しかし、この熟練工たちも減少してきておりそのノウハウの継承がなかなか進まない状況にあります。
この状況で、品質が異なる製品を販売すれば、顧客に不信感を与えてしまいます。また、リコールといった大問題に発展した場合、社会的な信用までも失うでしょう。製造業で継続的な経営を行うためには、常に安定した品質の製品やサービスを提供しなければなりません。
製造業でAIを導入するメリット
AIの導入により、DX化を推進している企業も多いです。製造業でAIを導入した場合に得られるメリットについて解説します。
故障にはやめに対応できる
AIを導入すれば、人の眼や手では確認ができない異常や不具合などを検知できます。通常とは異なる動作や小さな異物の混入、温度検知などをセンサーで監視し、センサーで集めたデータをAIに機械学習させて分析すれば、故障予測が可能です。これにより、人が目視で確認するよりもはやく機械の異常を発見できるでしょう。
故障とまではいかない程度の異常をはやめに検知できれば、生産ラインをすべて停止して異常が起きた箇所を一から探すといった事態を未然に防止できます。機械の修理費用もおさえられるでしょう。歩留まりの悪化を防げ、生産効率のアップも目指せます。
安定して高品質のものをつくれる
AIの導入によって、作業を自動化できれば、不良品をつくらなくなるようにできます。AIで製品の検査を行い、少しでも異常や品質のばらつきがみられたものにはライン上で取り除くことも可能です。AIは感情や作業環境に左右されることがなく、人為的なミスを防げるため、高品質な製品を確実に生産できるでしょう。
人材不足の解消
先ほども解説しましたが、製造業における人材不足は深刻な問題となっています。特に技能人材が突出して不足しており、ビジネスに影響を及ぼすほどになっている企業も少なくありません。その点、AIを活用すれば、少ない人材でも製造ラインを回すことが可能です。たとえば、製造計画や在庫管理、人員配置計画などは、すべてAIで自動化できます。
AIによる最終チェックを実施すれば、検査に必要な人員を減らせるうえに、高い精度の検査を行えます。ただし、AI技術の導入方法や導入後の活用方法を先導するリソースが足りないといった新たな課題に直面する企業も多いでしょう。
客観的で高精度な分析
AIに十分なデータを機械学習させられれば、より精度の高い分析が可能です。従来では、人員配置や生産ラインの状態、在庫管理などは、熟練の職人の予測によって判断されていました。
しかし、十分なデータを蓄積し、AIで高精度なデータ分析を行えば、客観的なデータをもとにした予測が行えます。さらに、将来において避けられない従業員の世代交代にも対応できるでしょう。
音声処理の活用(外国人従業員とのコミュニケーション)
AIの導入によって、言語が違う従業員間のコミュニケーションをしやすくできます。人材不足解消のために外国人従業員を採用する製造業も多くあります。なかには、日本語を話せない外国人従業員もいるため、作業の指示出しなどにおいて従業員間でのコミュニケーションに課題が残されていました。
しかし、AIを活用して自動化が進めば従業員間で会話する機会を最小限に減らせます。専門用語などの複雑な言葉を使った会話も不要になり、スムーズに生産できる体制が整備可能になります。
どのように製造業ではAIを活用するのか
製造業でAIを導入した場合、どのように活用するのでしょうか。ここでは、実際の活用例を3つ紹介します。
検査の自動化
まず人材不足と品質のばらつきの両方を解消する使い方を紹介します。具体的には、カメラで撮影した映像をAIで解析するといった検査の自動化が行えます。また、温度や赤外線などの各種センサー情報も同様にAIで解析が応用可能です。
「Spresense」を活用した場合、上記に加えて音声や振動の検知できます。検査を目視からAIによる自動化に変えることで、人材不足の解消と同時にヒューマンエラーの防止を実現できるでしょう。
生産計画の最適化
受注や在庫状況などのデータをAIに機械学習させれば、コストを最小限に抑えた生産計画を立てられます。原材料をどこからどのように仕入れて、どの工程でどれくらいの量を消費するのかといった計画を立てる際に、できるだけ材料が無駄にならないような計算を行います。
人間の考えで計画を立てれば、その人の希望的な観測や客観性とはかけ離れたあいまいな予測が入ってしまいます。その点、AIであれば客観的なデータをもとに予測を立てるため、無駄のない生産計画が立てられるでしょう。
課題の要因解析
生産ラインで発生している課題や原因の究明にもAIを活用できます。このような原因究明を人の手で行おうとすると、専門知識や実績が豊富な職人が自身の経験を頼りにしなければなりません。そのため、分析し終えるまでには長い時間をかけて試行錯誤を繰り返さなければならない可能性があります。
一方、AIを導入した場合は、蓄積したデータをもとに時間をかけずに自動で解析できます。さらに、原因の究明だけではなく、なぜこのような問題が発生してしまったのかといった理由までわかります。
「Spresense」は、カメラや音声、振動などによる機器の異常や不良品の自動検出が可能になることが強みの1つです。今まで熟練の職人しかわからなかったような、ささいな異常も検知できるようになります。
まとめ
製造業でAIを導入した場合、人材不足や品質のばらつきなどの課題解消が可能になります。職人の経験に頼るほかなかった場面においても、AIならデータ解析にもとづいた客観的な判断が行えます。
ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社の「Spresense」は、センサーとGPS、強力なプロセッサーを搭載したボードコンピュータです。消費電力が非常に少ない点や、拡張性の高さが強みです。エッジAIの活用を検討している企業や、AIを体験したい人におすすめです。