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AIによる振動検知で異常を予知できる?振動を観測する理由や検知手順、注意点を紹介

AIを搭載した振動検知システムは、どのような仕組みで異常を検知するのでしょうか。この記事では、AIによる振動検知システムの導入を検討している人に向け、異常検知に「振動」というパラメーターが用いられる理由、AIを搭載するメリットなどを紹介します。AIによる振動検知の手順や注意点も紹介するので、ぜひ参考にしてください。

目次

設備や構造物の安全にかかわる現場の課題

工場の設備、橋やビルなどの建築物は、定期的に点検・整備が行われます。ただし、作業員が定期的に点検しても、確実に「異常」を発見できるとは限りません。ミスをなくし経験の差を埋めるのは難しく、残念なことに事故が起きる場合もあります。

設備や部品などは安全のために定期的に交換が行われますが、まだ使用可能なものであっても交換する必要があるため、コストパフォーマンスが低下します。加えて、メンテナンスのたびに設備を停止することで、稼働率が低下します。

安全にかかわる3種類の保全とは

安全にかかわる保全は、対処のタイミングより「事後保全」「定期保全」「予知保全」の3つにわけられます。「事後保全」は、設備の動作異常・停止などの事故が起きた後で対処する保全活動です。また「定期保全」は、定期メンテナンスなど日常的に行う保全活動を指します。

これら「事後保全」「定期保全」に対し「予知保全」は、異常の寸前に不具合を感知する仕組みを採用しています。不具合の寸前まで設備や部品を使えるため、コストパフォーマンスと稼働効率がすぐれた保全活動といえます。このため、「予知保全」を効率的に行うこが重要な課題となってきます。

異常発見に振動検知が向いている理由は?

予知保全には、よく振動検知が利用されています。振動検知が向いている理由について解説します。

ほかのパラメーターより異常がみえやすいため

そもそも設備や構造物の不具合をみつける際には、振動以外にも音や温度、光、外観などのパラメーターが役立ちます。ただし、振動以外のパラメーターは、観測対象以外からの干渉を受けやすい傾向があります。たとえば、工場ではいくつもの設備が稼働しているため、温度や音、光などは、肝心なデータを切り分けるのが難しく、観測が困難です。

それに対し、振動は異常がみつけやすいほか、異常が起きた際に比較的早く影響を受けるという特徴があります。そのため、異常を迅速にみつけるうえで、振動検知は役立ちます。

振動状態により不具合の原因を推測できるため

通常振動の時のデータを基準として、異常振動の波形を調べることで、不具合の原因を推測できます。ただし、複数の不具合が波形に影響を及ぼしている場合もあるため、目視のみでの分析は困難です。FFT解析などの周波数解析装置を使い、異常の原因を推測しましょう。なお、異常の例としては、部品のひび割れや摩耗、軸ズレなどが挙げられます。

旧式生産設備であっても振動検知可能

振動検知は、古い設備にも導入できます。後付けで振動検知センサーを取りつけられるため、設備そのものをかえる必要はありません。稼働中の設備を停止しなくても取り付けられるセンサーや、振動分析にAIを活用した高機能なセンサーなども登場しています。

振動検知にAIを活用によるメリットとは?

学習と分析に長けたAIは、あらゆる分野で活躍しています。ここでは振動検知にAIを用いるメリットを紹介します。

導入までのスピード

異常時の振動データがなくても、AIを搭載した振動検知ならば運用を始められます。AIには学習能力が備わっているため、正常時の振動データをもとに異常検知が可能です。設備を稼働させたまま生産ラインを停めることなく導入を進められます。

異常検知の精度

振動データから人の目で判断する場合、見る人の経験やスキルにより、バラつきが生じてしまいます。せっかくデータを取得しても異常を見逃す可能性もあります。しかしAIならば、高精度な分析が可能です。

AIによる振動検知の導入手順

AIにデータを分析してもらうには、通常の振動検知に比べ、特別な工程が必要になります。以下で導入手順について解説します。

現状把握を行う

AIによる振動検知システムの効果がわかるように、現状のメンテナンス状況を記録します。客観的に評価するためには定量的に記録することが大切です。メンテナンスの頻度や時間、作業に関わった人数などを記録しておきましょう。

振動検知をする対象に優先順位をつける

すべての設備に振動検知を導入する必要はありません。優先順位をつけ、重要度が高い設備から導入を始めましょう。たとえば製造現場の設備であれば、生産能力・品質レベル・安全上などの項目を決め、停止すると影響が大きい設備を優先的にピックアップしましょう。

仮に一時間停止すると損失はいくらになるのか、設備を入れ替えるならいくら必要かなど、具体的に考えることで優先順位の判断に役立ちます。

振動データを収集する

AIの判断基準となる振動データを収集します。通常時のデータのみでも構いませんが、不調な設備があれば、不良サンプルとして取得しておきましょう。設備入れ替え前のものがあれば振動データに影響が出ている可能性があるため、収集しておくことをおすすめします。

振動データをAIに学習させる

収集した振動データをもとに、AIに学習をさせましょう。機械学習では、人が指示した判断基準をもとに、AIが判断の基準を学習します。たとえば、製造現場で良品のデータのみを抽出してAIに提示すると、AIは良品の特徴を学習し、不良品を識別できるようになります。

深層学習は、機械学習よりも一歩すすんだ学習が可能です。良品と不良品のデータが入り乱れた状態でAIに渡すと、AIは自力で不良品と良品の特徴をつかみます。なお、振動データを使ったAIの深層学習は、すでに構造物の異常検知に応用されています。

振動検知をスタートする

センサーが設備に取りつけられている状態を確認し、振動検知をスタートさせます。AIは学習した振動データとリアルタイムのデータを比較し、異常を検知するとアラートを鳴らします。アラート発生時のルールをマニュアル化し、迅速な行動ができるように計画を立てておきましょう。

AIによる振動検知の注意点とは?

高度な分析が期待できるAIですが、振動検知の導入方法によっては現場に負担がかかったり、測定がうまくいかなかったりする場合があります。以下の注意点をおさえておきましょう。

振動検知の対象をしぼる

振動検知を行う対象が多いと、データ収集だけでも時間がかかります。通常の業務の合間に作業を行うと、現場に負担がかかる可能性があります。また、取得したデータのノイズを取り除く作業も必要となります。優先順位をつけ、振動検知を導入する対象をしぼりましょう。

センサーの設置が難しい場合がある

センサーは、できるかぎりノイズを拾いにくい場所に取りつける必要があります。ただし、後付けで設置するため、ノイズの少ない場所が取りつけたい場所であるとは限りません。精度の高いデータを取得するために、センサーを高所や狭所に取りつける場合もあります。

高性能センサーを活用したAIによる振動検知

Spresenseは、ハイレゾリューションなマルチチャンネルのADを持つため、高性能な振動マイクロフォンなどにつなげて使用が可能です。これにより機械の微小なモーター音や振動の変化などをデジタル変換し、AIを用いてエッジで異常検知を行うことが可能です。

また、Spresenseはバッテリーを含む本体がコンパクトなのに加え、低電力で機能し、環境発電も可能なため、設置場所を選びません。また、堅ろう性にすぐれ、過酷な環境での測定にも対応できます。加えてAIが異常時のデータのみを判別し送信するため、不要なデータによる通信・ストレージコストを削減可能です。

まとめ

振動検知は設備や建築物の異常検知に使われ、振動データを分析することで異常の原因も推測できます。AIを用いると振動検知の導入スピードがはやく、高性能な分析が可能です。導入の際は、設備に優先順位をつけ取り組みましょう。

ソニーセミコンダクタソリューションズグループSpresenseは、省電力で機能し、高い信頼性と演算能力を誇ります。また、複数マイクでの集音や高速ADでのセンシングも可能です。ぜひ興味のある方は、まずドキュメントサイトをご覧ください。

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