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AIの仕組みとは?ディープラーニングの仕組みやAIの作り方を解説します

2021年はAIブームの最中といわれています。AIを活用したサービスが次々に登場し、事業に活用する企業も増えています。そのため、「AIの仕組みが知りたい」と思っている人も多いのではないでしょうか。この記事では、AIの仕組みや作り方、活用の具体例などについて解説します。ディープラーニングにも触れているため、ぜひ参考にしてください。

目次

AIとは何か

AI(Artificial Intelligence)とは、人工知能のことです。ただし、AIは研究途上にあって解釈も研究者によって異なるため、定義は明確ではありません。この記事においては、AIの定義を「人間と同じように音や画像などの情報を検知し、高度に知的な判断や推論を行う人工的なシステム」とします。

一般的にAIは、強いAIと弱いAIの2種類にわけられます。以下で詳しく解説します。

強いAI

強いAIとは、意識を持つ汎用人工知能です。人間と同じように思考能力があり、コンピュータが苦手とする、あいまいな概念も理解できます。1つの分野だけではなく、あらゆるタスクをこなせる汎用人工知能が、強いAIです。映画などに登場する自律型ロボットに近いものと考えられていますが、2021年時点では、強いAIは開発されていません。

弱いAI

弱いAIとは、特定の内容に特化した特化型人工知能です。プログラムどおりに動作するAIであり、自意識はなく思考もできません。代表例としては掃除ロボットや囲碁用AI、顔認証システムなどがあります。2021年時点で利用されているAIは、すべて弱いAIです。ただし、特定の分野で人間を上回る高い性能を発揮するケースも少なくありません。

AIが注目される背景とは

AIの研究自体は、1950年代から継続して行われており、研究者以外がAIに注目したAIブームも、過去に2回起こっています。

第1次ブームは、人工知能という言葉が初めて使われた、1956年のダートマス会議に端を発し、1960年頃まで続きました。第2次ブームが起こったのは1980年代です。過去のブームはAIの限界が明らかになるなどして終わりましたが、2021年は第3次ブームの最中にあります。

ここからは、3回目のAIブームが起こった理由について解説します。

応用できる技術が整ってきた

1つめの理由は、技術の発展により、人間の仕事に役立つ具体的な形で、AIを応用できるようになったことです。たとえば、音声認識システムを使ったスマートスピーカーや、自動運転技術が搭載された自動車などが挙げられるでしょう。AI搭載の電化製品も増えており、研究者以外にも、AIが身近な存在になりつつあります。

第1次ブームの頃には、パズルやチェスができるAIが、すでに開発されていましたが、人間の仕事を楽にするAIは作れませんでした。

生産人口の減少による人材不足

2つめの理由は、先進国が抱える人材不足の解決に役立つと考えられていることです。特に日本では、少子高齢化や労働力不足が深刻化しており、人材確保に悩む経営者も少なくありません。

単純作業や繰り返し作業など、コンピュータに向いているタスクをAIに肩代わりさせれば、人間は人間にしかできない仕事に集中できます。コンピュータは処理スピードが速く、ミスもしないため、将来的には、AIに置き換えられる職種が出てくる可能性があります。

アナログデータがデジタル化している

3つめの理由は、アナログデータのデジタル化が進み、ビッグデータ化していることです。クラウド技術の進化によって、保存可能なデータ量は飛躍的に増えました。人間には難しいビッグデータの分析も、大量のデータから重要な情報のみを抽出できるAIなら可能です。

第2次ブーム時点では、AIの学習に使う大量のデータを人間が用意する必要がありましたが、ディープラーニングがこの状況を大きく変えました。

AIの仕組み

AIの主な仕組みには機械学習とディープラーニングがあります。ディープラーニングは機械学習に、機械学習は人工知能に内包される概念です。以下で詳しく解説します。

機械学習

機械学習とは、コンピュータにデータの特徴を習得させて分析や予測を引き出す方法です。たとえば、猫の特徴を大量のデータから学んだAIは、学習しなかった猫のデータも「猫だ」と識別できます。特徴を定量的に表す数値を特徴量といい、機械学習では人間が設定します。

機械学習は、教師あり学習、教師なし学習、強化学習の3つに分類されます。正解を事前に与える手法を教師あり学習、正解を与えずに、AIが特徴ごとにグループ分けする手法を教師なし学習と呼びます。

強化学習

強化学習は機械学習の一種で、特定の環境下で、報酬(価値)が最大になる行動をAIに探させる方法です。たとえば、迷路を最速で脱出する場合なら、AIはあらゆるルートを試して最短ルートを選びます。

強化学習はチェスや囲碁で最善の一手を探す場面や、自動運転でもっとも安全な動きを決める場面などで利用されています。企業の財務諸表や株価などのデータから、最善の戦略を割り出す株式のAI運用も人気です。

ディープラーニング

機械学習を発展させた手法です。人間の脳にある神経回路を模した、数理的モデル(ニューラルネットワーク)をベースにしています。入力層と出力層の間にある隠れ層を多重化した仕組みで、深層学習とも呼ばれます。

最大の特徴は、AIが隠れ層の特徴量を自動で設定できることです。高品質のデータを大量に学ばせるほど精度が上がります。ディープラーニングは、もっとも多くの分野で利用されている、AIの代表的技術です。

AIの仕組みを活用した事例

ここでは、AIの仕組みを活用した事例について解説します。

異常検知・故障予知

機器の異常検知にAIが使われているケースです。機器が故障すると、ビジネスが止まって多大な損害が発生するおそれがあります。センサーが通常とは異なる音や振動、匂いなどを検知した場合に、AIが適切な処置につなげることで、故障や事故を未然に防げます。人間よりも精度の高い検知を常時継続できる点がAIの強みです。

不良品検知

不良品検知にAIが使われているケースです。製造業の生産ラインや農作物の仕分け、建物診断などに活用されています。画像データを学習したAIが、センサーで異常を検知した場合、不良品と判断する仕組みです。運用中にデータ収集・解析ができれば、不良品や異常を見分けるルールをAIが自ら学んで精度を向上させます。

RPAによる自動化

オフィス業務で普及が進むRPAは、定型業務を自動化できる仕組みですが、AIではありません。しかし、AIと組み合わせることで高度な自動化を実現できます。判断が必要な部分にAIを組み込むことで、複数のRPAや異なるシステムとの連携が可能です。AI搭載型RPAに定型業務を任せれば、人間にしかできない業務に人材をあてられます。

エンタテインメントへの応用

囲碁や将棋など2人で行うボードゲームはールが明確に決まっており、相手の手も見えるため、AIと相性がよいジャンルです。AIは一瞬であらゆる手を分析し、最適な一手を予測します。実際にチェスや将棋では、過去に何度もAIが人間に勝っています。ただし、不確定要素の多い多人数参加型のゲームや、運が絡むゲームなどでは、未だに人間が有利です。

セキュリティへの応用

人の言葉や動きを検知して、AIが適切な処置につなげるケースです。防犯カメラや無人レジ、無人受付などで利用が進んでいます。たとえば、店内に設置されたセンサーが、通常とは異なる不審な行動を検知すると、スタッフに通知が届くといった仕組みです。音や人間の表情で居眠り運転を予測できるAI搭載センサーも登場しています。

音声・文章認識技術の応用(コールセンター)

コールセンターはAI活用が活発な分野です。チャットボット導入や音声認識システムによる通話内容のテキスト化などは、その代表例です。センサーでオペレーターの業務状況を把握して解析し、離職率の改善につなげる取り組みも実施されています。

医療・介護への応用

医療では、レントゲンやCTの画像診断にAIが使われています。人間が見逃しやすい異常も正確に検知できる点が強みです。生活習慣病やガンのリスクを予測できるAIも開発されています。介護の現場では、健康状態や行動をセンサーで把握する、徘徊対策にGPS搭載グッズを活用するなど、AIが活躍しています。

AIの作り方

ここでは、AIの作り方を3つの段階にわけて解説します。

データの収集

AIに学習させるデータを収集する段階です。AIの仕組みや用途によって、データの種類や形式、量が異なります。AIに精度の高い仕事をさせるなら、精度が高い大量のデータが必要です。データ収集や調整を行うリソースがない場合は、既存のデータセットを使いましょう。データ量削減に役立つ新しい技術の開発も進められています。

データから学習させる

AIにデータを学習させてモデルを作る段階です。一から学習モデルを作る場合は、AIを動かす環境を準備する必要があり、プログラミングや統計学などの知識が欠かせません。一方、ツールやフレームワーク、APIを利用すれば、手軽に学習モデルが作れます。プログラムを使わずに、直感的な操作のみで学習モデルが作れるサービスも登場しています。

実際に運用する

学習済みモデルを実際に動かして評価する段階です。データの収集と学習、評価を繰り返し実施して、AIの精度を高めます。データの精度が低かったり偏りがあったりすると、適切な解析や予測ができません。学習済みモデルを別の分野に応用する転移学習も、広く利用されています。最終的にはAIをサービスに組み込んで市場に送り出します。

AIは今後どうなるのか

2021年は自動車の自動運転技術に関心が集まっていますが、AIが活躍する場はさらに広がっていくでしょう。実際の仕事に役立つレベルまでAIの技術は発展しています。一方、IoT端末にAIを搭載する、エッジAIの可能性も広がっています。クラウド型AIよりもセキュリティを確保しやすく、通信状態の影響を受けないため、安定的に運用できる点が魅力です。

まとめ

AIは、コンピュータがデータの特徴を学んで、速くて正確な判断や予測ができる技術です。学習に使うデータ次第で、AIの精度や方向性が変わる点に注意しましょう。

ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社の「Spresense」は、センサーとGPS、強力なプロセッサーを搭載したボードコンピュータです。消費電力が非常に少ない点や、拡張性の高さが強みです。エッジAIの活用を検討している企業や、AIを体験したい人におすすめです。

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