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エッジコンピューティングによるデータ処理とは?技術の内容から具体例まで解説

エッジコンピューティングという技術が注目を浴びていますが、そもそもエッジコンピューティングとはどのような技術なのでしょうか。ここでは、エッジコンピューティングを課題解決に利用したい企業に向け、技術の内容や具体的な活用方法まで詳細に解説します。エッジコンピューティングを理解し、課題解決に役立ててください。

目次

エッジコンピューティングとは?

エッジコンピューティングの技術について、詳しく解説します。

エッジコンピューティングの概要

エッジコンピューティングとは、IoT端末などのデバイスにかかわるデータ処理を、近距離に設置されたデバイスやモジュール内で実施する技術です。またデータを処理するデバイスやモジュールを、エッジコンピュータと呼びます。エッジコンピュータは、各種センサーとサーバー間に位置し、円滑なデータ処理を行うため、巧みに処理を分担するために生まれました。

オンプレミスとは?

オンプレミス(on-premises)とは物理的なサーバーを指す言葉で、自社内に情報システムを保有し、企業自身がサーバーやネットワークの管理を行う形態を指します。基本的には、2000年代後半からクラウドサービスでの運用が一般化されるまでは、この運用形態が一般的でした。

オンプレミスは、初期コストが高く、セキュリティ・対障害などに関する維持コストとリスク、サーバー運営に関する知識のある人材確保などの課題がありました。

クラウドとは?

インターネット回線の高速化やコンピュータの仮想化技術が進んだことにより、インターネット経由でのサーバーサービスを提供するビジネスが一般化してきました。このような社外の物理サーバーなどを利用した運用形態をクラウドと呼びます。クラウドサービスを利用することで、自社での物理的なサーバーなどのインフラを持つ必要がなく、様々なネットワークサービスを利用できることになり、初期投資やサーバー運営に関するコストや知識を必要とせずにネットワークサービスの構築が可能になりました。

オンプレミスとクラウドの違い

このようにクラウドの場合、サーバー運営の知識を持つエンジニアを有さずに、少ない初期投資で素早く簡単にサービスを立ち上げることが可能になりますが、同時に、カスタマイズの自由度が少ないなど点など加え、長期的な運用においては高コストになってしまうと言ったデメリットもあります。特に、IoTなどにより、より多くの端末からより多くのデータを収集するようなケースの場合、よりコスト増につながってしまいます。

このため、エッジコンピューティングにより、クラウドに送るべきデータの選択や抽象化などを行うことは重要になってきています。

エッジコンピューティングが注目される理由

IoT市場の成長と課題解決に関し、エッジコンピューティングが注目される理由を解説します。

IoT市場の成長を支えるため

IoT市場は確実に拡大しています。2023年のIoTエッジインフラ市場は740億円を上回るレベルになると予測している会社もあります。また、2019年の市場規模は約330億円であったため、予想通りならば、数年間で市場規模は倍以上になる見通しとの予測もあります。

なお市場規模が拡大するということは、通信量が増えることでもあります。大容量のデータをすべてクラウドに送り処理をすることは無理があり、データのセキュリティや個人情報の管理などの観点からも、エッジコンピューティングの普及が求められます。

IoTの課題を解決するため

IoTの課題には、ネットワーク負荷や、リアルタイムな通信の難しさなどが挙げられます。エッジコンピューティングでは、このようなIoTの課題解決が見込めます。

エッジコンピューティングのメリット

エッジコンピューティングを活用するメリットについて、5つの観点から紹介します。

ネットワーク負荷の軽減

エッジコンピューティングはクラウド上に送るデータを選択し、それ以外のものはエッジ端末内で処理します。またクラウドを使う際も、データの圧縮や抽象化により通信量削減が可能です。またエッジコンピューティングによりネットワークの負荷を軽減できることで、クラウド側でデータを扱う際にも、ユーザーの利便性が向上します。

通信コスト・サーバーコストの削減

クラウドを活用する企業では、通信コストがかさみがちでした。エッジコンピューティングは必要なときのみクラウドにデータを送るため、通信コストを削減可能です。また、多くのデータを処理する必要があるために増加してしまうクラウドサービスのサーバーコストも削減ができます。

リアルタイム処理

エッジコンピューティングではエッジ端末で処理を行い、その処理に合わせて端末自身の振る舞いを変更したり、その他の端末や機器の動作を規定したりすることで、環境や状況の変化にリアルタイムで対応することが可能です。

その際、特定のデータのみ通信に使うため、各端末間の通信も早く、すべてをクラウド処理する場合に比較するとリアルタイムな処理が可能になると言えるでしょう。

有事の際の対策

災害や技術的なトラブルにより、クラウドやネットワークがダウンする可能性があります。クラウドですべて処理するような場合、クラウドやネットワークが復旧するまで事業が停止しかねません。エッジである程度の処理を行い、M2Mでのエッジ間で処理が行える場合、この影響をできるだけ少なくすることが可能になります。

セキュリティ対策

エッジコンピューティングは、クラウド上でデータをやり取りしないため、情報漏洩のリスクを抑えられます。詳しいセキュリティの仕組みについては、のちほど解説します。

エッジコンピューティングの課題

エッジコンピューティングの課題を、費用と管理体制の観点から解説します。

初期費用・管理費用の負担

エッジコンピューティングはある程度のコンピューティング能力を持つ端末を多くの数量必要とするため、端末の初期費用・管理費用がかかります。ただしエッジコンピューティングにより通信コスト・クラウド費用を削減できることを考えると、それほどの負担にはならないケースも多いです。

現場における管理体制の構築

エッジコンピューティングにかかわる管理体制を構築することができないと多くの手間がかかってしまいます。エッジコンピューティング端末は、物理的に現場に近い場所にあり、数も多いケースが多く、不具合に現場で誰でも対応できるようにマニュアルを用意したり、リモートで不具合を管理したり、修正したりでできるようななどの体制を構築することがカギになります。

エッジコンピューティングにかかわるセキュリティ技術

エッジコンピューティングは高セキュアな技術です。ネットワークを介したデータのやり取りや、ゼロトラストに関して解説します。

通信プロトコルの選択と暗号化

通信プロトコルとは「通信のためのルール」です。IoT端末(エッジコンピューティング端末)ととクラウド間では、暗号化された通信プロトコルを使い、強固なセキュリティ体制を構築する必要があります。

「ゼロトラスト」をベースにした設計

ゼロトラストとは「何一つとして信用しない」という意味のセキュリティ体制です。かつては企業のセキュリティ対策というと、ファイアウォールが主流でした。しかしファイアウォールを突破されると、内部データを閲覧されてしまいます。

ゼロトラストでは、企業内のシステムであってもセキュリティリスクがあると考え、各段階でセキュリティチェックを実施し被害を最小限に食い止めます。

エッジコンピューティングへのAI搭載

エッジコンピューティングにAIを組み合わせると、データ処理に加え分析能力が高まります。エッジAIについて解説します。

エッジAIとは

エッジAIは、エッジコンピューティングにAIの技術を掛けあわせたものです。エッジAIの強みは、リアルタイムに大量のデータを使った分析が可能なことです。高度なデータ処理を行うエッジAIは、あらゆる業界から期待されています。

エッジAIの活躍が期待される業界・技術分野

エッジAIの活用例を、業界や技術分野別に紹介します。課題解決の参考にしましょう。

製造業

製造業では、機械が故障する前触れや不良製品の発見が困難でした。膨大なデータのなかのごくわずかな異常には、人間ではなかなか気がつけないためです。また、異常だと判断する基準も人それぞれ異なります。エッジAIを利用すると異常を高精度かつ速やかに発見でき、業務の効率化や人件費削減が可能になります。

農業

エッジAIによるリアルタイムな通信により、農作業の一部が自動化しています。たとえば除草作業において、エッジAIはカメラで捉えたデータを瞬時に分析し、作物はそのままで雑草のみ取り除きます。エッジAIの導入により、生産性の向上と人件費の削減が可能です。

自動運転

エッジAIが道路の状況を速やかに判断し、自動運転を行います。車間距離や通行人、予期せぬものの飛び出しなどあらゆるデータを、精度の高いリアルタイム通信により分析し自動運転に反映させます。人の命を預かる自動運転も、エッジAIならば実現可能です。

小売業

エッジAIはマーケティングに役立ちます。たとえば顧客の属性や、ネットショップへのアクセスログを使った高度なマーケティングが可能です。顧客にあわせたピンポイントな提案により、顧客満足度を向上させます。

気象予測

気象予測では、予測エリアを絞るほど多くのデータが必要になります。エッジAIは必要なデータのみクラウドに送り、素早く気象予測を行います。また高度な分析により、予測の精度が上がります。

エンタテインメント

リアルタイムな反応が得られると、ゲームのおもしろみをより体感できます。VRやARの分野でエッジAIは活躍し、ユーザビリティーの向上に貢献しています。また、エッジコンピューティングを利用することで演奏の難しかった楽器が簡単に演奏できたり、ライブ会場での一体感をより体感できたりするようになります。

エッジAIによるサービスやプロジェクトの事例

エッジAIを用いたサービスやプロジェクトについて、エッジAIを使うメリットを踏まえ紹介します。

牛の行動観察システム

エッジAIを高精度なセンサーに実装し、牛の首輪に組み込みました。牛の行動データを広域で収集し、病気やストレス、妊娠の兆候がないかなどを速やかに判断します。また牧場の環境にかかわるデータと組み合わせ、牛の飼育と管理に活用しています。

※参考:最先端エッジAI技術を活用した牛の行動観察システムを共同開発

エッジAIカメラによる外観異常検知

工場のラインなどで製品をカメラで撮影し、その画像に対しエッジAI処理によって外観に異常があるかどうかをリアルタイムで判定することで、傷や変形などの不良品をいち早く除去することを可能しています。

ドローン・AGVなどの自動運転

ドローンやAGVの自動運転などの技術には、エッジAIによる処理が非常に重要になってきています。カメラや距離センサーなどによる情報から障害物などをリアルタイムに認識し自律的に回避したり、強風などの自然現象からの影響をリアルタイムに判断し即座に姿勢を制御したり、様々な点でエッジAI処理が行われています。

まとめ

エッジコンピューティングとは、クラウドとエッジコンピュータを巧みに使いわけ、ネットワークの負担を軽減し、リアルタイムなデータ通信を可能にします。なおエッジコンピューティングにAIを搭載したエッジAIは、あらゆる業界やサービスの課題解決に期待されています。

「Spresense」は、手軽で小さく省電力でありながら、パワフルなエッジコンピューティングが可能です。またAIやFA、ロボティクス、スマートスピーカー、個人情報をエッジ処理するセキュリティシステムまで、幅広い範囲で活躍しています。

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