インダストリー4.0とソサエティ5.0の違いとは?それぞれの役割や概要を解説!

近年、日本政府はソサエティ5.0を推し進めていますが、これと似た概念でドイツ政府が行うインダストリー4.0があります。両者は似たような言葉の響きですが、正確に違いを理解している人は少ないのではないでしょうか。この記事では、インダストリー4.0とソサエティ5.0について、それぞれの概要や違いを解説します。それぞれの違いについて理解するために、ぜひお役立てください。
目次
インダストリー4.0とは
インダストリー4.0とは、ドイツ政府産業界が推進する製造業の国家戦略プロジェクトです。第四次産業革命のことを指し、具体的にはIoTやAIといったIT技術を取り入れ、製造業を改革することを目標にしているプロジェクトです。
インダストリー4.0は「相互運用性」「情報の透明性」「技術的アシスト」「分散的意思決定」といった、4つの設計原則に基づいて推進されています。
コンセプトはスマートファクトリー
インダストリー4.0のコンセプトはスマートファクトリーです。スマートファクトリーとは考える工場という意味があります。人間と機械、そのほかのあらゆる企業資源がお互いにつながり合い、生産プロセスを高めるための概念です。スマートファクトリー化された工場は、的確に必要なデータを把握して最適なオペレーションを実行できます。
具体的には、機械やセンサーを活用することで工場が見える化され、人間がいなくても安心して稼働する仕組み作りを行ってスマートファクトリー化します。
インダストリー4.0で実現できること
インダストリー4.0で実現できることは以下のとおりです。
・製造プロセスのデータ化
・工場の完全自動化
・人手不足の解消
それぞれ解説します。
製造プロセスの自動化
インダストリー4.0により、製造プロセスがデータ化されることで技術的な問題を解決できます。
たとえば、データの分析や収集は複雑なシステム構築が必要なため、コストが高いという問題があります。そのため資金力のない中小企業はベテランの勘や経験に頼る必要があります。
しかし、それでは確実性が懸念され、人為的ミスが起きる可能性も否定できません。このような技術的課題も、インダストリー4.0が発展していくことで解決が期待されています。
工場の完全自動化
インダストリー4.0が普及することで、工場の完全自動化が可能となります。なぜなら、インダストリー4.0により工場がスマート化することで、遠隔でも稼働状況を把握できるようになり、工場の完全自動化を図れます。たとえば故障や点検、トラブルがあったときだけ人が生産ラインに入り対応する形ができると、普段は人がいなくても生産ラインを動かせるようになります。
このように人はトラブルが起きたときだけ、生産ラインに入れば良いので、普段の生産工程は自動化することが可能なのです。
人手不足の解消
インダストリー4.0は人手不足の解消にもなります。日本は深刻な人手不足が課題とされています。これは工場で働く製造業も同じことで、人手不足に悩んでいる現場は多くあります。インダストリー4.0が普及し生産ラインの自動化が進むことで、単純作業は機械に任せることができます。その結果、人的リソースを削減することができ、人手不足の解消につながるのです。
ソサエティ5.0とは
ソサエティ 5.0とは超スマート社会を実現させるための取組で、仮想空間であるサイバー空間と現実空間であるフィジカル空間を高度に融合させる施策です。もともとは内閣府が第5期科学技術基本計画で提唱した、人間中心の社会を目指す取組で、この取組により「社会的課題の解決」と「経済発展」の両立を目指しています。
ちなみにソサエティ5.0以前では、ソサエティ1.0は狩猟社会、ソサエティ2.0は農耕社会、ソサエティ3.0は工業社会、ソサエティ4.0は情報社会を実現するという概念がありました。ソサエティ5.0はこれらに続く新たな社会を目指しており、日本の未来社会の理想形であるともいえるでしょう。
ソサエティ5.0の問題点
以下の3つの問題点がソサエティ5.0には存在します。
・既存の産業へダメージがある
・労働者の仕事を奪う可能性がある
・人間がソサエティ5.0に対応できるのか
それぞれについて、以下で詳しく解説します。
既存の産業へダメージがある
一例として、ソサエティ5.0の代表的な産業の「シェアリングエコロジー」により将来、クルマの販売台数は激減するという試算があります。この試算によると、日本に現在流通する6,000万台のクルマが10分の1になると予想されています。クルマの需要が減ってしまうと、自動車産業に大ダメージとなり、壊滅状態になるかもしれません。
労働者の仕事を奪う可能性がある
ソサエティ5.0が実現することで、AIやIoTが搭載されたロボットが導入され、人が行う仕事が奪われる可能性があります。イギリスのオックスフォード大学と野村総合研究所の調査によると、この先10〜20年以内には、日本の労働人口の約49%がAIやロボットにより代替可能であることがわかっています。
たとえばスーパーの店員や銀行の窓口係、タクシーの運転手などは近い将来ロボットに置き換えられると予想されています。
人間がソサエティ5.0に対応できるのか
ソサエティ5.0が浸透したとしても、人間がその社会に対応できるのかという問題があります。たとえばバスの自動運転や遠隔治療など、本来目指す世の中に高齢者などの市民が付いていけるのかという問題があります。アメリカではこの問題について活発に議論されています。
日本でも、将来的な活用のために議論が必要であるといえるでしょう。特にデジタルネイティブではない高齢者が、ソサエティ5.0に対応できるのかという問題に論点が置くことが求められます。
ソサエティ5.0が解決する社会的課題
ソサエティ5.0が解決できる社会的課題には、主に以下の3点があげられます。
・食料のロスの削減や食品の増産
・温室効果ガスの排出削減
・社会的コストを抑制
それぞれどのような課題解決につながるのか、詳しく解説します。
食料のロスの削減や食品の増産
ソサエティ5.0で解決できる課題として食品ロスの削減や食品の増産があります。日本は世界全体でも食品ロスが多く、生産した食料の3分の1が廃棄されているという状態です。その一方で、世界では食糧難に陥っている人が約8億人います。
この課題を解決するために、ロボット技術やICTを活用した高品質生産、超省力を実現する「スマート農業」が推進されています。その結果、スマート農業が実現する食料の増産が期待でき、需要と供給に合わせた量や種類を効率的に生産できるため、食品のロス削減につながるのです。
温室効果ガスの排出削減
ソサエティ5.0では温室効果ガス(GHG)の削減に期待できます。日本では温室効果ガス(GHG)の排出量が12億1,300万トンと世界でも有数の排出国であり、社会的な課題となっています。
そのため、最新技術を用いる「環境イノベーション戦略」や、太陽光などの「再生可能エネルギーの主力電源化」によって、GHGの支出量が実質ゼロになることを目指しています。
社会的コストを抑制
ソサエティ5.0では、社会的コストの抑制にも貢献します。日本では、少子高齢化により医療人材が不足し、社会的コストが増大することが予想されています。またそれだけでなく、地域間の医療格差が広がることも懸念されています。これらの課題を解決するために、ソサエティ5.0では医療分野でのロボットやAIの利用を推進しています。
最新技術によって医療と介護の需要増に対応し、社会的コスト増大や人手不足の課題が解決されることを期待されています。
インダストリー4.0とソサエティ5.0の違い
インダストリー4.0とソサエティ 5.0は実はほぼ同じ概念です。そのため社会的問題を解決した先の未来を語る上で、ほぼ同じ意味として使われるケースが多いといえます。
あえて大きな違いをあげるとするならば、インダストリー4.0は製造業に着目している一方で、ソサエティ 5.0は社会全体に着目しているという点で両者は異なります。
まとめ
近年、インダストリー4.0とソサエティ5.0が注目を集めています。インダストリー4.0とソサエティ5.0の社会的課題を解決させ、人によってより良い未来を目指すという取組です。それぞれの概念が浸透することで、人が抱える問題が解決されたスマートな世の中を実現できるでしょう。
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