IoTにおけるエッジコンピューティングとは?メリットやニーズを解説

IoTの普及に伴い、エッジコンピューティングのニーズがどんどん高まっている状況です。この記事では、エッジコンピューティングの活用方法を知りたい人に向けて、エッジコンピューティングの概要や活用シーンを解説します。IoTの導入に際してエッジコンピューティングを有効活用するために、ぜひ参考にしてください。
目次
エッジコンピューティングとは
エッジコンピューティングとは、ネットワークで使用される情報処理を行うコンピュータを複数にわけて配置し、それぞれでデータを処理する方法です。
エッジコンピューティングの「エッジ」とは、ネットワーク上でデータが発生する端末付近を表しています。アメリカの調査会社は、データが生成される場所またはその近くでデータを処理する方法をエッジコンピューティングと定義しました。
対して、クラウドコンピューティングは端末で発生したデータをネットワークからクラウドに送信してから処理します。従来はクラウドコンピューティングが一般的でしたが、インターネット上で発生するデータの量は爆発的に増えているため、エッジコンピューティングの需要が高まっています。
エッジコンピューティングのメリット
エッジコンピューティングには、どのようなメリットがあるのでしょうか。大きな3つのメリットを解説します。
リアルタイムでの情報処理
エッジコンピューティングの場合、発生したデータをすぐに処理でき、リアルタイムでさまざまな情報を得られます。
データの処理は端末付近で行うため、いちいちネットワークを介してデータを送信する必要がありません。通信距離が短い分、従来のクラウドコンピューティングよりも、データの通信や処理の速度が向上している点が特徴的です。
エッジコンピューティングの場合、情報収集の速度はほとんどリアルタイムだといっても過言ではありません。データを活用した意思決定や調整などのスピードも向上させられます。
コストが抑えられる
エッジコンピューティングを活用すれば、IoTの導入により発生するコストを節約できます。クラウドコンピューティングの場合、必ずクラウドへデータを送信しなければなりません。そのため、膨大な量のデータのすべてを送信すると莫大な通信費がかかります。
しかし、エッジコンピューティングではネットワークでデータを送信しなくても、データの処理が可能です。クラウドへ送信するデータは限定的であり、通信費も少なくて済みます。
また、エッジコンピューティングに必要なサーバーはコンパクトにまとめられるため、管理に必要な人的コストを削減できます。従来に比べてサーバーの台数も削減でき、ハードウェアの導入や維持にかかるコストも少なくなるでしょう。
セキュリティの向上が期待できる
エッジコンピューティングなら、クラウドコンピューティングよりもネットワークでやり取りするデータの量は少なくなります。送受信するデータの量が減ると、悪意をもった第三者から攻撃を受けた場合に発生する情報漏洩のリスクも軽減できます。
クラウドに送信するデータの種類を厳選し、必要最小限に抑えれば従来よりも安全な運用を実現可能です。実際、セキュリティやコンプライアンスの面から導入を検討する企業も増えています。
エッジコンピューティングの仕組み
エッジコンピューティングは端末のすぐ近くでデータを処理できるため、クラウドに送信するのは本当に収集する必要があるデータだけに絞り込めます。全体のデータの量が多くなっても、それぞれのエッジに組み込まれたサーバーによりスムーズに処理できます。
もともとは、IoT機器で発生したデータはすべてクラウドに送信されていました。データ量が膨大になった現状では、クラウドコンピューティングですべてのデータを処理するのは非効率です。エッジコンピューティングなら、それぞれで処理したデータの一部のみをクラウドで管理できます。通信コストや管理の面から考えても、効率的な運用が可能です。
エッジコンピューティングのニーズ|将来的な活用方法を解説
エッジコンピューティングには、どのようなニーズがあるのでしょうか。将来的な活用方法を解説します。
工場・インフラにおけるニーズ
ネットワークを介して音声や画像をやり取りする場合、通信するデータの量が多いためコストも高くなりやすいです。しかし、エッジコンピューティングとともにAIを取り入れると、効率的なデータ処理が可能になりコストも節約できます。
たとえば、工場は24時間稼働し続けているところも多く、IoTを活用して監視する場合は扱うデータ量が膨大です。エッジコンピューティングなら基本的には端末付近でデータを処理し、異常があった場合にのみ通知できます。
また、インフラで取得できるさまざまなデータを活用するうえでも、エッジコンピューティングの導入は効果的です。たとえば、カメラ映像、騒音計、人の集まりを調べる3密センサなどから得られるデータをエッジで分析すると、一定基準に達した場合のみアラートを発せられます。河川の氾濫や土砂崩れなどに関する情報もスムーズに提供可能です。
これらの技術は、スマートシティーの仕組みを円滑にするためにも役立つでしょう。
ARにおけるニーズ
ARとは「拡張現実」のことで、カメラを通して現実世界にデジタルの映像を映し出す手法です。ARはリアルタイム性が重要であるため、データをスピーディに処理する必要があります。
ARを映し出す端末にエッジコンピューティングを取り入れれば、さらに質の高いARを実現可能です。遅延なくスムーズに映像が映し出され、ユーザーはより有益な体験ができます。
自動運転におけるニーズ
正確で安全な自動運転を実現するためには、データをリアルタイムで処理する必要があります。データのやり取りや分析に時間がかかれば、重大な事故を招くリスクがあるからです。
自動運転を実現するためには、車両の周囲にいる歩行者や車両だけでなく、建物や看板などのさまざまな処理が必要です。自動運転にエッジコンピューティングを活用すると、そのような複数のデータもリアルタイムで処理できるようになり、適切な判断が可能になります。
また、各車両で取得したデータをエッジで処理したうえでクラウドへ送信すれば、複数の車両の情報をビックデータとして収集できます。それを分析してフィードバックすると、運転性能も向上させられるでしょう。
まとめ
エッジコンピューティングは、IoT機器から取得できるさまざまなデータを効率的に処理するために役立ちます。今後は、さらに幅広い分野で活用される可能性が高いです。
Spresenseは、IoT向けのスマートセンシングプロセッサを搭載しているため、IoT端末の活用に興味がある人へおすすめです。高い省電力や演算能力をもち、複数のマイクによる集音も可能です。IoTをスムーズに利用するためにぜひ導入してください。